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元ネタの事件の予習が必要な映画『ワンスアポンアタイムインハリウッド』のネタバレ感想。

今回ご紹介する映画は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』です。

 

生粋の映画オタクであり、新作発表の度に話題となるクエンティン・タランティーノ監督。

 

本作には脚本に5年を費やし、1960年代のロサンゼルスの街並みや音楽、衣装を忠実に再現しています。

 

主演にはレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットの2大スターを据えて、実際に起きた事件を題材とした内容となっています。
 
映画愛が溢れるタランティーノが見せた映画のマジックに酔いしれました。

 

元ネタの事件の予習が必要な映画でもありますので、その辺りも解説していきます。

映画『ワンスアポンアタイムインハリウッド』作品情報とあらすじ

作品情報

原題Once Upon a Time... in Hollywood
監督クエンティン・タランティーノ 
出演レオナルド・ディカプリオ
ブラッド・ピット
マーゴット・ロビー
製作国アメリカ
公開年2019年
上映時間161分
おすすめ度

あらすじ

あらすじ

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)はピークを過ぎたTV俳優。
彼に雇われた付き人でスタントマン、そして親友でもあるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)はリックを支える存在でもあった。

そんなある日、リックの隣にロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。
落ちぶれつつある二人とは対照的に輝いている彼ら。
リックは再び俳優として成功するため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をする。

そして、事件が起きる…。

映画『ワンスアポンアタイムインハリウッド』は元ネタの事件の予習が必要?

1969年、ハリウッド

© 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

時は1969年、ハリウッド。

 

ロサンゼルスにクラシックカーが走り、映画館とポスターで溢れ、街にはネオンが光ります。

 

撮影では実際にロサンゼルスの街を封鎖して時代に合わせた装飾をして撮影したそうです。

 

そのことで街が渋滞になり、ラジオで「タランティーノのせいで渋滞だ」と言われてくらいに大規模な撮影を行っていました。

 

タイトルは「Once apon a time in...HOLLYWOOD」、つまり「むかしむかしハリウッドで」という意味ですね。

 

この書き出しは、おとぎ話でよく使われる文章で、本作は実際の事件を題材にしていますが、タランティーノ流のハリウッドおとぎ話であることを匂わせています。

レオ様・ブラピ夢の共演!

© 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

今作の見所の一つとして間違いないのは、レオナルド・ディカプリオブラッド・ピットの共演です。

 

マーティン・スコセッシ監督の短編映画『オーディション』(2015)で共演はしていますが、本格的な長編映画で共演するのは本作で初めてとなります。

 

タランティーノ監督とは、それぞれ過去作で主演を担当していますね。

 

ディカプリオは「ジャンゴ繋がれざる者」(2012)

ブラピは「イングロリアス・バスターズ」(2009)

 

タランティーノ監督の過去作が気になった方は、おすすめ映画を紹介している記事を参考にどうぞ。

 

本作では、落ち目のハリウッド俳優とスタントマンという二人の役柄から生まれる男の友情がたまりませんでした。

 

初共演とは思えないほど息ぴったりで、激動の時代をそれぞれのやり方で生き抜いていく姿に熱いものを感じました。

元ネタのシャロン・テート事件の予習が必要

今作は、1969年に実際に起きた事件を題材にしています。

 

本作、ネタバレとかの話ではなく、実際の事件を知っているかどうかでストーリーの理解度が全然変わってくるんです。

 
事実、僕の隣で見ていたカップルは「何かよく分からないね」と話していていました。

 

確かに「1969年が舞台」「実際の事件を扱う」ということもあって予備知識なしでふらっと観るには難しい映画だと思います。

 

監督自身もその点は言及していて、SNSや宣伝を通して興味を持ち、事件を知るという流れでもいいと話していました。

 

一応、公式HPでも事件のページがあるくらいなので、知っておいて損はないと思います。

シャロン・テート事件

© 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

まず、今作で劇中登場するシャロン・テートという人物は実在の人物です。彼女は駆け出しの女優であり、後の『戦場のピアニスト』を監督することになる、ロマン・ポランスキーと結婚していました。

 

1969年8月9日、当時妊娠8ヶ月だったシャロンは突然自宅へやってきた襲撃犯に襲われ、シャロン自身と身ごもった子供、そこにいた友人たちまでもがナイフでめった刺しにされて惨殺されてしまうのです。

 

彼女を殺害したのは、狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信仰者たちによる犯行でした。驚くことにこの事件、シャロンは人違いだったのです。

 

シャロンが住む家の前の住人に対してマンソンが恨みを持っていて、殺害計画を立てていたのですが、すでに引っ越していたため、当時住んでいたシャロンが人違いによって殺されてしまったのです。

 

殺した張本人たちは自分が誰を殺したかも知らなかったというのだから恐ろしいですよね。

 

この凶悪な事件の首謀者であるチャールズ・マンソンについても少しお話しします。

チャールズ・マンソンという男

© 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

チャールズ・マンソンは劣悪な環境で生まれ育ち、社会に適応できず、犯罪を繰り返して人生の大半を刑務所という人生を送りました。

 

青年期の彼の風貌は、当時の流行でもあったカウンターカルチャーの一つである、ヒッピーと重なります。

 

ヒッピーとは、アメリカで始まり、ベトナム戦争などで軍事主義に疑問を抱き、抵抗した社会運動です。

具体的には精神的な解放を求めて瞑想やドラッグ、フリーセックスなどを行いました。

スタイルとしては「浮浪者」のイメージが強く、男性は長髪で髭を生やし、女性はほぼ化粧せずノーブラジャーといったものが主流です。

カウンターカルチャーとは、簡単にいうと既存の社会のあり方に疑問を感じ、それに抵抗(カウンター)した生き方をするというムーブメントのことです。

 

マンソンは家出した少女たちをLSD(麻薬)を使って洗脳して、「ファミリー」を作り、集団生活を送っていました。

 

そんなカルト集団の教祖になったマンソンは自らが手を下すことはなく、洗脳した信者たちに犯行を行わせていました。

 

マンソンは聖書や歌詞などから偏った解釈をすることが多く、次第にその思想は過激化していくのでした。

 

彼にはミュージシャンになるという夢もあり、「ザ・ビーチ・ボーイズ」のデニス・ウィルソンとも知り合うことができ、彼を通して出会うのが音楽プロデューサーのテリー・メルチャーです。

 

メルチャーが当時住んでいたのが、ハリウッドの富豪たちが住む丘の上、後にシャロン・テートが住む家だったのです。

 

マンソンがメルチャーの家を訪れた際に、「メルチャーは引っ越した」とぞんざいに言われ、それにより自分のミュージシャンとして夢を壊されたと感じて激昂したことが引き金となり、あの凄惨な事件は起きてしまいます。

 

まだ映画を観ていない方は、ここまでの情報があれば本作をより楽しめると思います。

映画『ワンスアポンアタイムインハリウッド』のネタバレ感想

© 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

※以下映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のラスト

シャロン・テートの身に起きた悲しき事件についてはこれで分かったと思います。

 

しかし、僕たちが観ているのはクエンティン・タランティーノの映画です。

 

タランティーノは事件を知る僕たちに魔法をかけてくれました。

 

シャロンの事件を扱っている以上、実際の事件となるシーンが訪れることは想像ができます。

 

実際、ストーリーも1969年の8月9日へと時計の針が進んでいきます。

 

リックとクリフはイタリア映画での出演を終えてロサンゼルスへ帰ってきます。

 

リックは結婚して、クリフとの契約もこれで終わりというターニングポイントでもありました。

 

その夜、時を同じくしてシャロンは自宅で友人と過ごします。

 

そして事件が起きます。

 

事実ならマンソン・ファミリーが襲撃したのはシャロンの家ですが、本作ではリックの家に襲撃することになります。

 

これこそが、タランティーノがかけた魔法であり、それからの展開は怒涛の連続です。

 

クリフが愛犬のブランディとの散歩を終えて帰ってきたタイミングでマンソン・ファミリーがリックの家に押し入ってきます。

 

LSDでハイになっていたクリフは朦朧としながらも、映画牧場にいた奴らだと気づきます。

 

リックの妻を人質に取られながらも愛犬ブランディと共に襲撃犯を返り討ちにし、その内の一人が体勢を崩してプールでくつろぐリックのもとへ行きます。

 

突然のことに驚くリックでしたが、プールの中で暴れる犯人に対して、リックが以前映画で使用した火炎放射器を倉庫から持ち出し犯人を丸焦げにしてやります。

 

クリフは刺されるものの軽傷で終わり、その後警察が来て事件は収束します。

 

騒ぎを聞いていた流れから、リックはシャロンの家へ招かれるのでした。

 

タランティーノの魔法により、シャロン・テートが死なないという物語を見せてくれたのです。

タランティーノの映画に込めた想い

インタビューでタランティーノ監督も話していましたが、事件のことが先行してしまうため、シャロン・テートがどうしても「悲惨な事件にあった不運の女性」という印象になってしまうのを変えたいという想いがあったようです。

 

そのため、シャロンの描き方に特別なことはしていません。

 

自分が出演した映画を観てそれを観る観客の反応に喜ぶキュートな姿なんかは本当に素敵でした。

 

リックとクリフの関係性の描き方も最高でした。

 

酒を飲みすぎてセリフを飛ばしてイラついたり、共演する子役からプロ意識を教わったり、その子前で泣いてしまったり。

 

TVから映画へとシフトするのが難しいというアメリカならではのショービズ界の事情も伺えます。

 

リックは豪邸に住み、クリフはボロいトレーラー暮らし。

 

同じ業界で格差がこれだけ目に見えて分かるというのに、リックよりクリフの方が不自由なく暮らしているように映されます。上下関係が生まれそうな状況なのにそうではない。

 

だからこそ、本来生まれないだろう友情が描かれて、二人の関係性がアツいのです。

 

そして何よりブラピがカッコいい。

 

最近の出演作の中ではダントツに渋くてかっこよかったです。

 

 
タバコを吸うシーンの色気は半端ないし、アンテナを直すだけでなぜあんなにカッコいいのか意味不明だし、体はバキバキの現役だし、ブルース・リーと戦っちゃうしと、眼福でした。

 

今作、事件が起きるという前提がある分、物語上での起伏を抑えてラストに一気に引き込むという形になっています。

 

映画牧場でのシーンの緊張感からのラストの怒涛の展開、そして過激描写。

 

タランティーノ自身も本作の展開を輪ゴムに例えて、「引っ張っている分長く飛ぶ」と話していました。

 

タランティーノ監督は話好きということもあって、影響を受けた作品や他の映画のオマージュを惜しみなく話してくれます。

 

見ておくと楽しめるという作品をご紹介して終わります。

  • ロマン・ポランスキー監督作『吸血鬼』
  • セルジオ・レオーネ監督作『夕陽のガンマン』
  • スティーブ・マックイーン主演作『大脱走』
  • ブルース・リー出世作TVシリーズ『グリーン・ホーネット』
  • ブルース・リーがシャロン・テートに武術指導した『サイレンサー第4弾/破壊部隊』
  • タランティーノ監督作『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』『ヘイトフル・エイト』

映画『ワンスアポンアタイムインハリウッド』は映画愛に溢れる作品でした

実際の事件を題材としながら、映画愛に溢れたタランティーノらしさを存分に感じる作品でした。

 

タランティーノは10本映画を撮ったら引退すると発言していますが、今作が好評だったらこれで引退の可能性も示唆もしています。

 

今後も彼の動向に目が離せません。

 

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