今回ご紹介する映画は『US/アス』です。
監督デビュー作でもある前作『ゲット・アウト』にて、アカデミー賞主要4部門ノミネートで電撃デビューしたジョーダン・ピール監督の2作目です。

独特の不気味な世界観は流石でした!
『ゲット・アウト』でみせた奇想天外なアイディアを今作ではどのようにみせてくれるのでしょうか。
『Us/アス』の作品情報とあらすじ
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作品情報
『Us/アス』はジョーダン・ピール監督のホラー映画
© Universal Pictures
ジョーダン・ピール監督
本作は『ゲット・アウト』で初監督を務めて話題を呼んだ、ジョーダン・ピール監督が手掛けています。
前作でも感じたのですが、ジョーダン・ピール監督が描くホラーは、直接的な怖さというよりは背筋が凍る系のゾクゾクさせる演出が得意だなと本当に感じました。
冒頭のシーンからの前半の流れは本当に見事で、一気に不気味な世界へ観客を誘います。

一方で、監督はコメディアンとしても活動しているため、劇中でのユーモアの入れ方も絶妙なんですよね!
ピンと糸を張ったような緊張感と、一気にそれが緩むユーモアの緩急が本当に見事で、まったく飽きずに観られました。
ちなみにプロデューサーは『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのジェイソン・ブラムが務めていて、『ゲット・アウト』や『ハッピー・デス・デイ』も手掛けるスリラーの名手とのタッグとなっています。
予測不能な恐怖が突如襲いかかる!
前作でもそうでしたが、監督が作り出す不気味な世界観は独特なものがあり、「何かが起こりそうな」雰囲気作りがとても巧みだと思います。
今作では、「ドッペルゲンガー」つまり自分と同じ容姿の人間が題材。
幸せな家庭に突如訪れた不気味な影、それは自分たち家族とと同じ容姿を持つ者たちだったのです。
彼らは何の目的があってやってきたのか…
※以下では、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
映画『Us/アス』ラストのネタバレ
© Universal Pictures
映画『Us/アス』のラスト
ざっくりとあらすじからラストまで振り返ります。
USとの対面
アデレードは幼い頃にいった遊園地で鏡の迷路に迷い込み、自分そっくりの人間に出会うという恐怖体験をし、それにより言葉が発せない症状を起こしてしまいます。
時が経ち、結婚して家庭を持ったアデレード一家は別荘のあるサンタクルーズにやってきます。
再び同じ場所にやってきたアデレードはそこで不気味な時間を過ごします。
その夜、アデレード一家は自分と同じ容姿を持つ者たちに家を襲われます。
それぞれが自分と戦うことになり、決死の覚悟で殺し合います。
USたちの正体とは…
自分たちの家族以外にも同じ容姿を持つ人間たちが、アメリカ全土に渡っていることが分かります。
なんと、彼らは政府によって作られたクローンだったのです。
そのクローン計画に失敗した政府は、クローンを実験用のウサギと共に地下に収容しました。
テザードと呼ばれるクローンたちは、魂を持たないものの、深層心理でクローンと本人は繋がっていることが分かるのです。
彼らは地上で暮らす本人たちの生活を乗っとるべく現れたのです。
アデレードたちは何とか自分たちのクローンを倒すものの、アデレードのクローンであるレッドに息子ジェイソンをさらわれてしまいます。
過去の記憶
追いかけるアデレードは、幼少期のトラウマの場所であるビーチの鏡の迷路へと向かいます。
そこはクローンの地下施設と繋がっていて、レッドとの死闘を繰り広げます。
僅差でレッドに勝利したアデレードは、ジェイソンと共に地上に戻ってきます。
無事、家族全員合流して車を走らせるタイミングで、アデレードの記憶がフラッシュバックします。
かつて鏡の間で自分とそっくりのもう一人の自分(レッド)に会ったアデレード。
実はその時、レッドに首を絞められ気絶し、地下へ連れて行かれてたのです。
そしてレッドはアデレードと入れ替わり、地上へと戻ったのでした。
つまり、アデレードだと思っていた人物は実はレッドだったのです。
車内でフラッシュバックした彼女は、隣にいる息子ジェイソンと目が合います。
ジェイソンは何かを感じ取ったような表情で、仮面をかぶります。
レッドは、不敵な笑みを浮かべるのでした。
その頃、テザードたちはアメリカ中を手を繋いで一つにつながっていました。
【ネタバレ考察】ジェイソンは入れ替わりだった
© Universal Pictures
丁寧な伏線
衝撃的なラストを迎えた本作でしたが、丁寧に伏線が貼られていたのも印象的です。
テザードたちは話せないため、レッドは両親にショックで言葉が出なくなったと思われていたのです。
逆に、喋れないはずのテザードたちの中で唯一話せていたのは、それがアデレードであったからで、首を絞められたことによりあのような不気味な声になっていたのでした。
- ビーチへいくことを拒む
- 会話下手を話す
- テザードたちと戦っていくうちに率先し戦うようになる狂気さ
- 返り血で服が赤くなっていく
上記のように、匂わせるようなシーンが散りばめられていました。
ジェイソンは入れ替わりだった
実はここからが本当のラストのようなもので、これはあくまでも一つの意見です。
実は、ジェイソンも入れ替わっていたのではないか。
アデレードがレッドであることに気づいたかのような表情を見せるジェイソン。
もちろんこれは正体に気づいたんだと思いますが、実はジェイソンも入れ替わっていたのではないでしょうか。
© Universal Pictures
それを感じさせるシーンはいくつもあります。
①車の中で音楽を聞いているシーンで、リズムに乗れないアデレードとジェイソン
あのとき、リズムに乗れなかったのは、人間と同様のリズム感を持ち合わせていなかいことを示唆している…?
②ビーチで「すごく変わっている」と言われたり、砂の城を作るのではなく、トンネルを作っていたこと
人と違うことをしていたこと、そしてトンネルは地下の世界を想像させるものでもあります。
③ビーチで鏡の迷路の方へさまよい歩いていた
アデレードと同様の道をジェイソンも辿っているようにも思えますよね。
④去年できていたライターのマジックを忘れている
このシーン、違和感を感じるシーンであると共に、ジェイソンのクローンの口元に火傷の跡があることから、火遊びに関する何かしらの出来事があったように感じられます。
⑤ジェイソンのクローンだけハサミを持っていない
ジェイソンとクローンが共通の「火」を通して繋がっていることを示唆します。また、罠だと気づいたことや、体の動きがリンクしたことも同じことと考えられます。
「じゃあジェイソンはいつクローンと入れ替わっていたのか」ということですが、そこについては何とも定かではありません。

もしかすると、はじめから入れ替わっていた可能性もあるかもしれません…!
その他にも、11時11分、11章11説、鏡、ハサミ、双子といった対称性、二重性を含ませる小物や表現が劇中で幾度となく出てくる点も、かなり考察できて面白いです。
『Us/アス』はホラーに見せかけて案外、社会派!?
© Universal Pictures
劇中でも登場し、かなりの印象を与えたのが「ハンズ・クロス・アメリカ」。
ラストシーンとも関連のあるハンズ・アクロス・アメリカは、1986年に実際にあった運動です。
アメリカの西海岸から東海岸までを人の手と手でつなぎ、一つの鎖になるという、アメリカ国内の貧困・飢餓へのイベントとして企画されたものでした。
実はこの企画に参加して列になるには、10ドルの寄付金が必要だったとのこと。
当然のことながら、貧しい階級の人々はそんなお金があるはずもなく、結果的にイベント達成のために寄付金なしでも列に参加して企画自体は達成しました。
しかし、寄付金は目標額を大きく下回り、結果的には中産階級の自己満足、富裕層の売名行為となってしまいました。

監督は、この時にみた映像の違和感からインスピレーションを受けたと話しています!
劇中、入れ替わる前のアデレードがテレビで観たのが、このハンズ・アクロス・アメリカでした。
その後、彼女は地下施設へと行き、そこで育つことになります。
アデレードが最後に観たあの映像が頭に残っていたことで、彼女が計画者となったとき、テザードたちのあの行動へとつながっていったと考えられます。
また、劇中登場する友人の白人家族。
彼らはアデレードたちよりも裕福な暮らしをしていたのですが、結果的に全員惨殺されている描き方からも白人と黒人の人種間での格差問題が感じ取れます。
彼らの最期、「Call the Police(警察を呼んで)」をスマートスピーカーが、N.W.A.の名曲「Fuck the Police」と勘違いしてしまうというシーンもN.W.A.が「主張する黒人たち」という意味のグループであることから伺える皮肉で面白いものでした。
映画『Us/アス』その意味とは
© Universal Pictures
「Us」という言葉には、「私たち」という意味以外に、レッドが言っていた「アメリカ人だ」という言葉通り、「US=United States」という意味も含まれていました。
それは、地下で暮らしていたテザートたちと地上の人間たちとの格差の現れであり、同じ容姿の人間でありながらも育った環境によってこうも違うということが伝わってきます。
地下施設への入口が下りのエスカレーターしかないことも、貧困階級、社会的弱者の立場が弱く、声を上げづらい社会状況ということを伺えました。
まとめ:新たなホラー映画ジャンルの誕生
以上、『US/アス』をご紹介しました。
一気に物語へと引き込む手腕、不気味な世界観と張りつめられた伏線の数々。そしてホラー映画としてだけではなく、笑わせる演出や裏にある社会的テーマ。

ジョーダン・ピール監督は今後も追っていきたい監督の一人ですね!
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