今回ご紹介する映画は『US/アス』です。
『Us アス』は、自分にそっくりなドッペルゲンガーに襲われる恐怖を描いたホラー映画。
監督は、前作『ゲット・アウト』でアカデミー賞主要4部門ノミネート、アカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピール。独創的な視点と社会風刺が詰まった作品が特徴です。
本作も、ドッペルゲンガーの正体や目的、そしてラストの衝撃的な展開について、さまざまな謎や伏線が散りばめられています。
本記事では、ネタバレありで『Us アス』のあらすじ、作品テーマやメッセージを考察・解説。
独特の不気味な世界観とテーマ性が見事な意欲作!
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『Us アス』の作品情報とあらすじ
『アス Us 』
あらすじ
アデレードと彼女の家族は、夏休みに別荘を訪れる。遊園地で奇妙な出来事が起こり、アデレードの過去のトラウマが蘇る。
5段階評価
予告編
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作品情報
タイトル | アス |
原題 | Us |
監督 | ジョーダン・ピール |
脚本 | ジョーダン・ピール |
出演 | ルピタ・ニョンゴ ウィンストン・デューク エリザベス・モス ティム・ハイデッカー |
撮影 | マイケル・ジオラキス |
音楽 | マイケル・エイブルズ |
編集 | ニコラス・モンスール |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 116分 |
動画配信サービス
配信サイト | 配信状況 |
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『Us アス』はジョーダン・ピール監督のホラー映画
ジョーダン・ピール監督
名前 | ジョーダン・ピール |
生年月日 | 1979年2月21日 |
出身 | アメリカ・ニューヨーク州 |
本作は『ゲット・アウト』で初監督を務めて話題を呼んだ、ジョーダン・ピール監督が手掛けています。
前作でも感じたのですが、ジョーダン・ピール監督が描くホラーは、直接的な怖さというよりは背筋が凍る系のゾクゾクさせる演出が得意だなと本当に感じました。
冒頭のシーンからの前半の流れは本当に見事で、一気に不気味な世界へ観客を誘います。
一方で、監督はコメディアンとしても活動しているため、劇中でのユーモアの入れ方も絶妙なんですよね!
ピンと糸を張ったような緊張感と、一気にそれが緩むユーモアの緩急が本当に見事で、まったく飽きずに観られました。
ちなみにプロデューサーは『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのジェイソン・ブラムが務めていて、『ゲット・アウト』や『ハッピー・デス・デイ』も手掛けるスリラーの名手とのタッグとなっています。
予測不能な恐怖が突如襲いかかる!
前作でもそうでしたが、監督が作り出す不気味な世界観は独特なものがあり、「何かが起こりそうな」雰囲気作りがとても巧みだと思います。
今作では、「ドッペルゲンガー」つまり自分と同じ容姿の人間が題材。
幸せな家庭に突如訪れた不気味な影、それは自分たち家族とと同じ容姿を持つ者たちだったのです。
彼らは何の目的があってやってきたのか…
『Us アス』のキャスト・キャラクター解説
ルピタ・ニョンゴ
役柄
アデレード/レッド。ゲイブの妻。幼少期のある体験後、上手く発声できない。
出演作
『それでも夜は明ける』『クワイエット・プレイス DAY1』
ウィンストン・デューク
役柄
ゲイブ/アブラハム。アデレードの夫。
出演作
『ブラックパンサー』『アベンジャーズ』
シャハディ・ライト・ジョセフ
役柄
ゾーラ/アンブラ。アデレードとゲイブの娘。
出演作
『ライオン・キング』
エヴァン・アレックス
役柄
ジェイソン/プルート。アデレードとゲイブの息子。
出演作
なし
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】映画『Us アス』あらすじラストまで
(C)Universal Pictures
幼少期のトラウマ
1986年、子供のアデレードは、サンタクルーズ・ビーチで両親の目から離れてファンハウスに迷い込む。鏡の迷路で自分のドッペルゲンガーに遭遇するという恐怖体験をしたアデレードは、それ以来言葉を発せなくなってしまう。
ドッペルゲンガーの襲撃
33年後、大人になったアデレードは、夫のゲイブ・ウィルソン、2人の子どもゾラとジェイソンと休暇に出かける。アデレードは夫に少女時代の恐怖体験を語るが、信じてもらえない。
その夜、一家は自分たちのドッペルゲンガーに襲撃される。彼らは外見は自分たちそっくりだが、赤いジャンプスーツを着てハサミを持っており、話す代わりに奇妙な音を立てていた。
本人/ドッペルゲンガー
- アデレード/レッド
- ゲイブ/アブラハム
- ゾーラ/アンブラ
- ジェイソン/プルート
アデレードたちは反撃し、家から脱出して友人たちの家に行くが、友人たちはすでに殺されていた。警察を呼ぼうとするが、テレビを見るとドッペルゲンガーたちが至るところで人を殺していることを知る。
トラウマとの対峙
アデレードたちは海岸沿いに車を走らせ、メキシコに逃げることにする。海岸沿いの町に着くと、多くの町民が惨殺されているのを発見する。
一家は行く手を燃える車で塞がれる。そこにはプルートの姿があった。アデレードはプルートに近づくが、プルートは誘導して車に火をつけて爆破させようとしていた。ジェイソンはその罠に気づき、車から脱出し、後ろ向きに歩くことで、プルートに同じ行動をさせる。
一家がプルートが火に包まれ行く様子に気を取られていると、レッドが現れてジェイソンをさらっていく。アデレードはレッドを追いかけると、幼少期のトラウマであるファンハウスにたどり着く。中に入ると、地下施設に通じる秘密の入り口を見つけ、白ウサギがのさぼる中、レッドの姿を見つける。
クローンの真実
レッドは、テザード(クローン)は実は政府が民衆をコントロールするために作ったクローンだと説明する。しかしその実験に失敗し、テザードたちは何世代にもわたって地下に放置され、魂が繋がったまま本人の行動を真似し、ウサギの生肉を食べて生き延びていた。
レッドは計画を立て、何年もかけてドッペルゲンガーたちを組織し、脱出させ、ドッペルゲンガーを殺害して復讐を遂げた。レッドとアデレードは戦い始め、アデレードは苦戦しながらもレッドを殺害する。その後、ロッカーに隠れてジェイソンを救出して地上に戻る。
アデレードとレッド
アデレードは家族を救急車に乗せて車を走らせる中、初めてレッドに会ったときのことを思い出していた。彼女はファンハウスで自分と遭遇した時、実は首を締められて気絶させられ、入れ替わっていた。
彼女自身が実はテザードであり、レッドがオリジナルのアデレードだったのだ。(アデレードだと思っていた人物は実はクローンのレッドだった)
クローンはアデレードの首を絞めて意識を失わせ(それによって声が出せなくなっていた)、地下に引きずり込み、アデレードと入れ替わっていた。
ジェイソンは母親を意味深な表情で見つめると、母親は笑みを浮かべる。その頃、アメリカ全土に渡ってテザードたちが手を繋いで列をなしていた。
レッドの声がかすれていた理由
(C)Universal Pictures
アデレードとレッドが実は逆転していたことが判明する、衝撃的なラストを迎えた本作。実は丁寧に伏線が貼られていたのも印象的です。
ファンハウスの出来事を機に、言葉が出なくなったアデレードは、それが恐怖体験というショックによるものだと思われていました。一方で、言葉を話せないテザードたちの中で、レッドだけがかすれた声で話せています。
この奇妙な関係性が、2人が実はファンハウスで入れ替わっており、私たちがレッドだと思っていた赤いジャンプスーツの女性は、実はオリジナルのアデレードでした。彼女はレッドに喉を潰されたことで、声がかすれていたのです。
一方で、言葉が発せないレッドは、アデレードと入れ替わって地上での人間生活を送ることで、少しずつ言葉を身に着けてたのです。
- ビーチに行くことを拒む
- 会話が下手であることを明かす
- テザードたちと戦っていくうちに率先して戦うようになる
- 返り血で服が赤く(レッド)なっていく
上記のように、アデレードとレッドの表裏一体さを匂わせるようなシーンが散りばめられていることも印象的。
ジェイソンとマスクの意味、ジェイソンの正体
(C)Universal Pictures
車の中のラストシーンでは、アデレードがレッドであることに気づいたかのような表情を見せるジェイソン。彼のなんとも言えない表情と、その後にマスクを被るシーンには2つの意味を感じられます。
ジェイソンとマスクの意味
ひとつは、母親に対して警戒する意味。母親と思っていた人が実は違った(テザード)と気付いたことで、それに敵対する意味が考えられます。
思い返してみると、ジェイソンがマスクを被るシーンが描かれるのは、プルートと一緒にいる時(プルートに被らされている)と、テザードと戦おうとする時(自ら被っている)でした。
これらを表面的に考えると、ジェイソンが車の中でマスクを被ったのは、母親ではない存在に対しての警戒心の現れではないかと考えることができます。
一方で、母親を受け入れる意味にも捉えることもできます。
ジェイソンのマスクが「モンスター」であることから、彼が「母親ではない何か=モンスター」に対して、マスクを被ることで、「自分は正体を知っているけど味方だ」と解釈することもできるのです。
オリジナルとドッペルゲンガーという表裏一体、二元性をテーマにした本作の巧みな表現がこのシーンに象徴されます。
実はジェイソンも入れ替わっていた説
本作が面白いのは、さらに一歩踏み込んでみると、ジェイソンの面白い考察もできる自由度の高さにあります。それは、実はジェイソンも入れ替わっていたのではないかという点。
それを感じさせるシーンはいくつもあります。
車の中で音楽を聞いているシーンで、リズムに乗れないアデレードとジェイソン
あのとき、リズムに乗れなかったのは、人間と同様のリズム感を持ち合わせていなかいことを示唆している…?
ビーチで「すごく変わっている」と言われたり、砂の城を作るのではなく、トンネルを作っていたこと
人と違うことをしていたこと、そしてトンネルは地下の世界を想像させるものでもあります。
ビーチで鏡の迷路の方へさまよい歩いていた
アデレードと同様の道をジェイソンも辿っているようにも思えますよね。
一年前にできていたライターのマジックを忘れている
このシーン、違和感を感じるシーンであると共に、ジェイソンのクローンの口元に火傷の跡があることから、火遊びに関する何かしらの出来事があったように感じられます。
ジェイソンのテザード(プルート)だけハサミを持っていない
ジェイソンとクローンが共通の「火」を通して繋がっていることが示唆されます。また、罠だと気づいたことや、体の動きがリンクしたことも同じことと考えられます。
「じゃあジェイソンはいつクローンと入れ替わっていたのか」ということですが、そこについては何とも定かではありません。
いろいろと解釈・考察できるところが本当に上手いんですよね…!
エレミヤ書11章11節・対称性のアイテム
(C)Universal Pictures
本作には、対称性、二元性を意味する様々なアイテム・モチーフが登場するところもポイントです。
エレミヤ書11章11節
例えば、ホームレスの男が持っていた看板の「エレミヤ書11章11節」。
それゆえ主はこう言いわれる、見みよ、わたしは災いを彼らの上に下す。彼らはそれを免ることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。
これは、神がイスラエルの人たちに言った言葉。イスラエルの人たちが神の言うことを聞かず、ほかの神に祈りを捧げたりや供物をするのを見て怒り、大きな災いを下すと言った場面です。
映画で考えると、クローン製作というアメリカ政府の愚行と、それによって引き起こされた虐殺という天罰という意味で捉えました。
同様に、「11」という数字は劇中で繰り返し登場しています。11時11分が何度も描かれていること、ゲイブが見ている野球の試合は11対11の同点など。
さらに、鏡、ハサミ、双子も同様で、これらのモチーフが、映画のテーマである対称性・二元性を効果的に表現しています。
ちなみに、映画『ジョーカー』の中でも11という数字が効果的に使われています。
ハサミは何を意味するか
特にハサミは、重要な意味を持ちます。テザードは、「繋がれた者」という意味があり、映画内で明かされるように、オリジナルとテザードは魂を共有しています。
地下にいるテザードたちは、地上のオリジナルたちの行動に結びついていることが描かれています。そしてレッドはそれを断ち切るために蜂起したのでした。
レッドは魂を断ち切ることを「解縛(Untethering)」と表現しています。まさにそのためのアイテムが、ハサミだったのです。
映画『Us アス』の意味と「ハンズ・クロス・アメリカ」
(C)Universal Pictures
「Us」という言葉には、「私たち」という意味以外に、レッドが言っていた「アメリカ人だ」という言葉通り、「US=United States」という意味も含まれています。
階級社会と経済格差
本作のテーマは、地上のオリジナルと地下のクローンに見られる二元性です。そしてその二元性は、言うまでもなく階級社会と経済格差を象徴しています。
便宜上、階級社会を【上流・中流・下流】の3つに分類すると、【上流=タイラー一家、中流=ウィルソン一家、下流=テザードたち】と当てはめることができます。
ゲイブがジョシュの暮らしを羨むように、レッドはアデレードに取って代わりたいと行動を起こしました。階級社会の下のものは、その階段を登りたい願望があり、それが本作においては複数のレイヤーで描かれています。
それら全体が「Us(私たち)」であり、人間は往々にして自分にないものを欲しがり、そしてまた誰かからそう思われているのです。持つものと持たざるもの二元性を描き、それらが私たち個人そのものでもあることを伝えています。
テザードによる虐殺は、映画全体で見れば恐怖にも思えますが、それは下の階級のものたちの「蜂起」であり「革命」なのです。
地下施設への入口が下りのエスカレーターしかないのは、階級の階段を登ることがいかに難しいかを象徴しています。
「Us」のタイトルは、檻に囚われたウサギの上に映し出されます。それは本作のように、政府の愚行によって代償を払うのが国民(ウサギ)の私たちだということを意味しているのかもしれません。
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』も本作に似た格差を描いています。
ハンズ・クロス・アメリカとは何か
(C)Universal Pictures
劇中で登場する「ハンズ・クロス・アメリカ」は、1986年に実際にあった運動です。
アメリカの西海岸から東海岸までを人の手と手でつなぎ、文字通り一つの「鎖」になるという、アメリカ国内の貧困・飢餓へのイベントとして企画されたものでした。
実はこの企画に参加して列になるには、10ドルの寄付金が必要でした。
当然のことながら、貧しい階級の人々はそんなお金があるはずもなく、結果的にイベント達成のために寄付金なしでも列に参加し、企画自体は達成しました。
しかし、寄付金は目標額を大きく下回り、結果的には中産階級の自己満足、富裕層の売名行為に終わってしまいます。
監督はこの出来事への違和感からインスピレーションを受けたと話しています。
劇中、入れ替わる前のアデレードがテレビで観たのが、このハンズ・アクロス・アメリカでした。
その後、彼女は地下施設へと行き、そこで育つことになります。
アデレードが最後に観たあの映像が頭に残っていたことで、彼女が計画者となったとき、テザードたちのあの行動へとつながっていったと考えられます。
また、劇中登場する友人の白人家族。彼らはアデレードたちよりも裕福な暮らしをしていたのですが、結果的に全員惨殺されている描き方からも白人と黒人の人種間での格差問題が感じ取れます。
彼らの最期、「Call the Police(警察を呼んで)」をスマートスピーカーが、N.W.A.の名曲「Fuck the Police」と勘違いしてしまうというシーンもN.W.A.が「主張する黒人たち」という意味のグループであることから伺える皮肉で面白いものでした。
まとめ:新たなホラー映画ジャンルの誕生
今回は、ジョーダン・ピール監督のホラー映画『Us アス』をご紹介しました。
一気に物語へと引き込む手腕、不気味な世界観と張りつめられた伏線の数々。そしてホラー映画としてだけではなく、笑わせる演出や裏にある社会的テーマ。
ジョーダン・ピール監督は今後も追っていきたい監督の一人ですね!
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