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DUNE デューン 砂の惑星 PART2

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SF

【ネタバレ感想・考察】『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』あらすじ・ラスト解説|SF映画の到達点であり大傑作

今回ご紹介する映画は『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』です。

『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演によるSF超大作の第2弾。

本記事では、ネタバレありで『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし
まめもやし

まさに圧巻…!映画史に残るSF超大作として、映画館で観なければもったいない作品でした!

前作の内容を振り返りたい人は、以下の『DUNE デューン 砂の惑星』ネタバレ解説記事を参考にしてください。

DUNE 砂の惑星
『DUNE デューン 砂の惑星』ネタバレ解説・感想・考察|つまらない?スパイスなど意味もわかりやすく解説

前作『DUNE デューン 砂の惑星』はプライムビデオで見放題!

DUNE デューン 砂の惑星DUNE デューン 砂の惑星

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『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』作品情報・配信・予告・評価

『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』

DUNE デューン 砂の惑星 PART2

5段階評価

ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :

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あらすじ

ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポールは、ついに反撃の狼煙を上げる。砂漠の民フレメンのチャニと心を通わせながら、救世主として民を率いていくポールだったが、宿敵ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサが、デューンの新たな支配者として送り込まれてくる。

予告編

↓クリックでYouTube が開きます↓

作品情報

タイトルDUNE デューン 砂の惑星 PART2
原題Dune: Part Two
監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本ジョン・スペイツ
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
エリック・ロス
出演ティモシー・シャラメ
ゼンデイヤ
レベッカ・ファーガソン
ジョシュ・ブローリン
オースティン・バトラー
フローレンス・ピュー
デイヴ・バウティスタ
クリストファー・ウォーケン
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン
レア・セドゥ
ステラン・スカルスガルド
シャーロット・ランプリング
ハビエル・バルデム
音楽ハンス・ジマー
撮影グリーグ・フレイザー
編集ジョー・ウォーカー
製作国アメリカ
製作年2024年
上映時間166分

配信サイトで視聴する

劇場で公開中

『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』監督・スタッフ

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
Gage Skidmore, CC BY-SA 3.0
名前ドゥニ・ヴィルヌーヴ
生年月日1967年10月3日
出身カナダ・キューベック州

主な監督作

監督は、前作のパート1に引き続きドゥニ・ヴィルヌーヴが続投。ヴィルヌーヴは、この作品を「壮大な戦争映画」と表現し、当初、2部構成にすることを発表していました。

一方、第2弾である本作『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』のインタビューでは、3作目へのヴィジョンを明かし、それがフランク・ハーバートの原作におけるサーガの2作目『デューン砂漠の救世主』をもとにしていることを明かしています。

制作スタッフらは、前作『DUNE デューン 砂の惑星』でアカデミー賞を受賞したメンバーや、監督の過去作に関係のあるスタッフらが集結。

原作:フランク・ハーバート『デューン 砂の惑星』

デューン 砂の惑星デューン 砂の惑星
フランク・ハーバート

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原作は、ヒューゴー賞を受賞したアメリカのSF作家フランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』

この小説は、SFのジャンルを変えた古典として広く評価されており、ジブリ宮崎駿の『風の谷のナウシカ』を始め、映画や小説など、SF作品の多くに影響を与えた作品と言われています。

映画化不可能と言われていたものの、1984年にデヴィッド・リンチ監督が映画化、その後、2000年にTVミニシリーズでジョン・ハリソン監督が映像化、そして2021年にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が2部作のパート1として映画化しました。

キャラクター役名/キャスト/役柄
ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)
ハルコンネン家に滅ぼされたアトレイデス家の生き残り。フレメンに加わり反撃の狼煙を上げる。
チャニ(ゼンデイヤ)チャニ(ゼンデイヤ)
フレメンの戦士。誠実さと権力に興味がないポールに次第に惹かれていく。
レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)
ポールの母。ベネ・ゲセリットの一員でポールを救世主にさせようとしている。
スティルガー(ハビエル・バルデム)スティルガー(ハビエル・バルデム)
フレメンのリーダー。ポールとジェシカを助け、次第にポールを救世主と信じるようになる。
ガーニイ・ハレック(ジョシュ・ブローリン)ガーニイ・ハレック(ジョシュ・ブローリン)
アトレイデス家の軍司令官でポールの武術指導の師。
ウラディミール・ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)ウラディミール・ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)
ハルコンネン家の領主。アトレイデス家を崩壊させた張本人。
ラッバーン・ハルコンネン(デイヴ・バウティスタ)ラッバーン・ハルコンネン(デイヴ・バウティスタ)
ウラディミールの甥で、惑星アラキスの統治を任された狂人。
フェイド=ラウサ・ハルコンネン(オースティン・バトラー)フェイド=ラウサ・ハルコンネン(オースティン・バトラー)
ラッバーンの弟。極悪非道な性格であり、ラッバーンに代わりアラキス統治を任される。
皇女イルーラン(フローレンス・ピュー)皇女イルーラン(フローレンス・ピュー)
皇帝シャッダム4世の娘。歴史家として宇宙の歴史を日記に記録している。
マーゴット・フェンリング(レア・セドゥ)マーゴット・フェンリング(レア・セドゥ)
ベネ・ゲセリットのメンバー。ある目的でハルコンネン家のフェイド=ラウサに近づく。
シャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)シャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)
宇宙を支配する帝国の皇帝でコリノ皇家の領主。

ネタバレあり

以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【あらすじ・ラスト解説】『デューン 砂の惑星 PART2』ってどんな話?

DUNE デューン 砂の惑星 PART2
(C)2023 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

フレメンのコミュニティ「シエチ・タブール」へ

映画は、皇女イルーラン(フローレンス・ピュー)が、書記に書き記す場面から始まる。彼女はハルコンネン家がアトレイデス家を崩壊させたこと、それに自分の父親であるシャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)が手助けしたことを書き記すが、父が息子のように面倒を見ていたレト・アトレイデス(オスカー・アイザック)を抹殺したことは理解できずにいた。

惑星アラキスでは、ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)と妊娠中の母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)は砂漠を横断し、他のフレメンらに合流し、ハルコンネン家のパトロールする兵士たちを蹴散らして、シエチ・タブールへたどり着く。

生命の水

決闘でジャミスを殺したこともあり、ポールとジェシカはフレメンらにスパイと疑われるが、スティルガー(ハビエル・バルデム)は評議会でフレメンのためにも協力が必要だと訴える。

スティルガーはフレメンの教母が死期を迎えていることを明かし、ジェシカに後継の教母になるように告げる。ジェシカは儀式として、致死性の毒物である「生命の水」を飲み、痙攣するが、体内で解毒に成功する。その見返りとして彼女は血統のすべての女性先祖の記憶を受け継ぎ、さらに胎児である娘アリアと心を通わせることができるようになる。

ジェシカは回復すると、ベネ・ゲセリットが知らしめた救世主の予言に対して懐疑的なアラキス北部のフレメンらを信じさせるため、弱いものから働きかけようと動き始める。

ポール・ムアッディブ・ウスル

一方、チャニ(ゼンデイヤ)と友人のシシャクリ(スハイラ・ヤコブ)は、予言はフレメンを支配するためのものであり、信じていなかった。しかし、権力を求めず、フレメンらと共に戦おうとするポールを受け入れ、尊敬するようになる。

ポールはフレメンたちの生活を通じて、彼らの言葉を学び、巨大なサンドワームを乗りこなし、フレメンの戦士を意味する「フェダイキン」として認められる。ポールは、フレメンの一員として「ムアッディブ」「ウスル」の新しい名前を得て、チャニとの絆も深めていく。

ポールたちフレメンは、繰り返しハルコンネン家のスパイス収穫を妨害し、ハルコンネン家のスパイス収穫に致命的な打撃を与える。

ジェシカは、より多くのフレメンたちを率いるため、予言への信仰心の強い南部へ向かうが、ポールは自分が救世主として南に行けば戦争が起こり、チャニや多くのフレメンを失うことになるヴィジョンを見ていたことで、北部に残ることを選択する。

フェイド=ラウサ

ウラディミール・ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)は、惑星アラキスの統治を任せていたラッバーン(デイヴ・バウティスタ)を咎め、彼の代わりに甥でラッバーンの弟であるフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)を抜擢しようとする。

ウラディミールは、フェイド=ラウサの生誕祭に出席し、フェイド=ラウサとアトレイデスの残党兵士を戦わせて技量を測る。フェイド=ラウサは3人の兵士を倒し、テストされたことに怒りをあらわにするが、ウラディミールはラッバーンの代わりにアラキスの統治者に任命する。

生誕祭にはベネ・ゲセリットの従者マーゴット・フェンリング(レア・セドゥ)も出席しており、彼女はフェイド=ラウサの適性を評価し、彼の遺伝子を確保するために派遣されていた。

ポールが見た過去と未来

ある時、ポールはスパイスの密輸業者を襲撃し、剣を交えるが、そのうちの一人が武術の師であるガーニー・ハレック(ジョシュ・ブローリン)であることに気づく。ガーニーはポールとフレメンらがハルコンネン家と戦うには不十分な戦力であることを知り、彼らにアトレイデス家が保有していた核爆弾の弾頭の隠し場所へ案内する。

一方、フェイド=ラウサ率いるハルコンネン軍がシエチ・タブールを発見して爆撃し、フレメンたちは居場所を追われ、捕らえられたシシャクリは殺害される。これにより、ポールらは南部へ旅立つことを余儀なくされる。

南部に到着すると、ポールはジェシカが飲んだ「生命の水」を飲まされ、昏睡状態に陥る。ポールを助けようとしたチャニは、自らの涙と命の水の混合物によってポールを目覚めさせることに成功する。

目覚めたポールは、過去の血筋の記憶を手に入れ、未来予知能力により、アラキスの未来に海があること、妹のアリアの姿を目撃する。さらに、過去の記憶から、ジェシカがウラディミール・ハルコンネンの娘であり、自らもハルコンネンの血筋であることを知る。

救世主の誕生

南部フレメンの指導者と大勢のフレメンらが集結し、ポールの処遇について話し合う。指導者らは儀式に則り、ポールとスティルガーを決闘させて決めようとするが、ポールはそれを拒否し、手にした過去と未来をみる力を披露し、自分が救世主「リーサン・アル=ガイブ」であることを宣言する。

ポールは皇帝シャッダム4世に立ち向かうことを決心すると、シャッダム4世は、イルーランとベネ・ゲセリットの教母ガイウス・ヘレン・モヒアム(シャーロット・ランプリング)、皇帝の精鋭部隊サーダカー兵たちを引き連れてアラキスにやってくる。

シャッダム4世は、フレメンらを支配できなかったハルコンネン家の失態を咎める中、ポールたちフレメン軍はサンドワームを駆使してサーダカー兵たちを制圧し、ポールはシャッダム4世と対峙する。

ポールは父親の仇であるウラディミールを殺し、シャッダム4世に王位継承を挑む。ポールは、イルーランとの結婚を要求し、断れば核弾頭でアラキスのスパイス供給源を破壊すると脅す。

ポールとシャッダムの代理であるフェイド=ラウサとの決闘が行われ、ポールが辛勝し、フェイド=ラウサを刺し殺す。イルーランは父シャッダム4世を殺さないことを条件に、ポールとの結婚に同意する。

しかし、帝国を支配するコリノ皇家はポールの即位を認めておらず、それを知ったポールは、彼らを葬るためにフレメン軍の進軍を命じる。ジェシカとお腹の中のアリアは「これがムアッディヴの聖戦の始まりだ」と考える。

一方、ポールの選択に傷心したチャニは、戦争に加わることもポールに従うことも拒否し、サンドワームに乗ってアラキスに残ることを選択する。

ヴィルヌーヴの映画哲学を浴びる

DUNE デューン 砂の惑星 PART2
(C)2023 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』は、フランク・ハーバートによる古典的SFの名作を映像化した映画。

前作のラストで、ゼンデイヤ演じるチャニは「これは始まりに過ぎない」という言葉を残していましたが、まさにそれを体現するような続編です。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督自身も、最初の映画がより「瞑想的」であったのに対し、本作は、「より多くのアクションが満載の壮大な戦争映画」だと語っています。

映画は、まさに現代におけるSF映画の到達点を目撃したような圧巻の映像体験となりました。

本作の最も特筆すべき点は、圧倒的な映像体験にあります。前作のパート1が、約40%のIMAX撮影だったのに対し、第2弾である本作は、すべてIMAX撮影によるものだと明かしています。

撮影監督は、『ザ・バットマン』や『ローグ・ワン:スター・ウォーズ・ストーリー』などを手掛け、前作でアカデミー賞撮影賞を受賞したグレイグ・フレイザー

衣装デザイナーは前作に引き続き、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『アルゴ』『レヴェナント』などでこれまでにアカデミー賞衣装デザイン賞に5回ノミネートされているジャクリーン・ウェスト

VFX(特殊効果)は『ブレードランナー2049』『ファースト・マン』『DUNE 砂の惑星』で3度アカデミー賞視覚効果賞を受賞しているポール・ランバートと、2度目受賞しているゲルト・ネフツァー

そして音楽は、言わずとしれた映画音楽会のレジェンドであるハンス・ジマー

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、今できる最高のSF映画を作るために集められた精鋭たちを引っ提げて、究極のSF超大作を作り上げています。

そしてここに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画哲学が加わり、ミニマムで洗練された映画として完成されています。例えば、映画の印象的な場面のひとつである中盤のハルコンネン家のシーン。

このシーンは白黒映像となっていますが、「太陽が当たるものはすべて洗い流される」というルール設定したためだとInverseのインタビューで明かしています。撮影には赤外線カメラと赤外線ライトを用いています。

印象的な奇妙な花火も、この哲学のもとで「光を吸い出す形」になっていて、ヴィルヌーヴの美学・映画へのこだわりを感じられます。本作は、これらに象徴されるような「バキバキにキマった」映像が全編を通じて堪能できるため、映画館(特にIMAX)で見る必要があるのです。

NetflixやAmazonプライムビデオなど、サブスク型の動画配信サービスが普及し、多くの人が気軽に、身近に映画を楽しむことができる時代になっています。

私はIMAXや映画館至上主義ではないですが、そうでなくても本作においては、映画館で見なければ価値が半減すると言っても過言ではありませんでした。

まめもやし
まめもやし

SF映画の到達点に立ち会っているような感覚でした!

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普遍的であり現実の延長にも感じる人間ドラマ

DUNE デューン 砂の惑星 PART2
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素晴らしい映像体験ができるだけでも観る価値はありますが、前作がそうだったように、映像美だけではイマイチ満足できない部分もあります。PART2である本作は、前作が導入でしかなかったかのように、目まぐるしく動き、全く飽きさせない人間ドラマを極上のアクションで届けています。

前作単体だけを観ると、あまりにも退屈な印象もありましたが、PART2の本作を観た後では、ヴィルヌーヴが2部構成で表現した理由、それぞれのキャラクターの変化がグッと真に迫り、素晴らしい人間ドラマとなっています。

まめもやし
まめもやし

前作で「つまらない」と感じてしまった方も、本作を観たら大きく印象が変わると思いますね!

代表的なのは、ティモシー・シャラメ演じる主人公ポールの変化。前作の『DUNE デューン 砂の惑星』におけるポールが、「秘蔵っ子のお坊ちゃまが世界を知る物語」だとすれば、本作『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』では、「運命と役割の間で揺れ動く物語」だったように感じます。

言い換えれば、物語は少年時代が終わり、ポールが大人へと移行していく様子を映し出しています。

前作でアトレイデス家の跡取りとして大事に育てられたポールは、惑星アラキスへの移住と、ハルコンネン家と皇帝による家族の虐殺を経て、最終的にフレメンらに加わりました。

前作の終盤、ポールはフレメンの戦士ジャミスと決闘し、彼を殺しました。それはポールにとっての子供時代との決別を意味していました。そして本作でも、同様の決闘シーンが終盤にありました。フェイド=ラウサとの決闘シーンです。

本作でポールは、自分が南部に行くことで戦争が起こり、多くの人が死ぬヴィジョンを見ていました。ポールはそれを阻止しようとしますが、それが運命であるように、あらゆる要素が彼をそうせざるを得ない状況に追いやっていくのです。

本作におけるポールの決闘と勝利は、彼が自分に課せられた救世主の役割を演じる選択をしたことを意味しています。そこには、前作でジェイソン・モモア演じるダンカン・アイダホに無邪気な笑顔で飛びついていた少年だった姿はなく、フレメンの救世主として、砂の惑星デューンの統治者として帝国に宣戦布告し、聖戦の幕開けとなりました。

そしてその選択は、ポールがしきりに避けていた大勢の人間の死の上に立つ権力闘争の始まりでもあるのです。

ヴィルヌーヴは、原作者のフランク・ハーバートの意図に焦点を当てて、このSFサーガが、ポールを英雄ではなく、アンチヒーローとして描く物語であることを明かしています。

本作が古典的SF映画として多くの映画に影響を与えたことも知られていますが、前作と本作のポールのキャラクターアークをみると、『スター・ウォーズ』サーガにおけるアナキン・スカイウォーカーとの繋がりを感じずにはいられません。

同時に、対象的なのが『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズで、主人公の成長と運命との葛藤、選択の様子が、本作の延長線上にあり、合わせてみると楽しめると思います。

チャニの物語でもある

本作が素晴らしいのは、壮大な映像体験と主人公ポールだけではなく、166分という長い上映時間で他のキャラクターたちによる極上の人間ドラマを作り上げていること。

特筆すべきは、ゼンデイヤ演じるチャニでしょう。先に上げたポールのアンチヒーローとしての文脈を、チャニを通じて描いているところも見事です。

フレメンであり、救世主の予言に懐疑的な北部出身のチャニは、よそ者であるポールにも一定の距離を取っていましたが、彼の誠実さと権力を求めない姿に惹かれていきます。しかし、そんなポールが救世主としての運命に身を委ねていくと、2人の距離は再び離れていくことになります。

ポールとチャニが愛し合っていることは確かなものでしたが、ポールは政治的戦略で皇帝の娘イルーランとの結婚を推し進めます。本作では、ポールがフレメンらに受け入れられ、スパイス収穫を阻止する任務を一緒にこなし、結束を深めていく一方で、ポールの理想や信念が変化し、生存のための選択によってチャニと離れていく様子が描かれています。

本作におけるポールの姿は、いわゆる「白人酋長、白人の救世主(white savior)」そのものですが、チャニの視点でポールをアンチヒーローとして描く側面があるからこそ、英雄や救世主といった役割に対する疑問を投げかけ、テーマを批判的に捉えています。

多くのクリエイターたちが映像化に挑戦しては頭を抱えてきたフランク・ハーバートの原作を、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、自らの映画哲学と数多くの優秀な制作者たちの力で見事に映像化してみせました。

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