今回ご紹介する映画は『エクス・マキナ』です。
アレックス・ガーランド監督による2015年のSFスリラー映画。
派手なアクションや手に汗握る展開はないものの、哲学的な思想と計算された美しさを感じる良作でした。
その独特な世界観は素晴らしく、第88回アカデミー賞視覚効果賞を受賞しています。

洗練された映像美を楽しめる良作SF映画です!
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映画『エクスマキナ』の作品情報とあらすじ
おすすめポイント
人工知能(AI)とシンギュラリティ。
アレックス・ガーランド監督による、人工知能の実験を描いたSFスリラー映画。
ド派手なアクションはありませんが、洗練された空間と世界観の中の哲学的な面白さが光る一本。
アカデミー賞で「視覚効果賞」を受賞した作品で、AIロボットのエヴァの造形の美しさは近年のSF映画の中でも随一。

美しさと不気味さの共存する独特の世界観!
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映画『エクスマキナ』のスタッフ・キャスト
監督:アレックス・ガーランド

『エクス・マキナ』の監督・脚本を務めたのはアレックス・ガーランド。
イングランド出身の脚本家であり、ダニー・ボイル監督とタッグを組むことが多く、『28日後…』の脚本なども彼が手掛けています。
本作は映画監督デビュー作となり、いきなりアカデミー賞で視覚効果賞を受賞するなどの才能の片鱗をみせています。
ドーナル・グリーソン

プログラマーのケイレブを演じたのは、アイルランドの俳優、ドーナル・グリーソン。
主な出演作
- 『ハリーポッターと死の秘宝』
- 『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』
恋愛映画の名作『アバウト・タイム』で彼を知っている人も多いのではないでしょうか。また、『ハリー・ポッター』シリーズでは、ウィーズリー家の長男も演じています。
アリシア・ヴィキャンデル

女性のアンドロイド、エヴァ役を演じたのはスウェーデンの女優、アリシア・ヴィキャンデル。
主な出演作
- 『コードネーム U.N.C.L.E.』
- 『リリーのすべて』
本作がきっかけで広く認知され、その後、『リリーのすべて』ではアカデミー賞助演女優賞を受賞しています。

ある意味、美しすぎるご尊顔は神秘的ですよね!
オスカー・アイザック

大手検索エンジンの社長であり天才プログラマーのネイサンを演じたのは、アメリカの名門音楽大学出身のオスカー・アイザック。
主な出演作
- 『ドライヴ』
- 『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』
- 『スター・ウォーズ』シリーズ
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』
彼は、コーエン兄弟の映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』で注目を集めました。
後に『スターウォーズ』続三部作でポー・ダメロン役に抜擢され、世界中に知られるようになりました。ちなみにカイロ・レン役のアダム・ドライバーも同じ音楽大学出身です。
キョウコ(ソノヤ・ミズノ)

ネイサンの施設で働くメイドのキョウコ役を演じたのは、モデルやバレリーナとしても活躍している日系イギリス人の女優ソノヤ・ミズノ。
主な出演作
- 『エクス・マキナ』
- 『ラ・ラ・ランド』
- 『アナイアレイション -全滅領域-』
- 『クレイジー・リッチ!』
本作が映画初出演となり、その後に、『ラ・ラ・ランド』や『クレイジー・リッチ!』などの話題作に出演。

意外と知られていませんが『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンの同居人の一人です!
映画プロダクションA24配給
本作の配給を担当しているのは、「A24」という映画プロダクション。
2012年設立の新しいプロダクションながら、賞レース映画や話題の映画を多く排出している注目のプロダクションです。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】AIとシンギュラリティ

ジャンルで言えば、SFスリラーの本作ですが、激しいアクションや手に汗握る展開はありません。
割と穏やかな展開と、人間とAIという永遠の課題に対して哲学的な目線で描かれています。そのためハマる人にはハマりますが、つまらないと感じる人も結構いるかもしれません。
『エクス・マキナ』のキモとなるのは「チューリングテスト」です。
チューリングテストとは、機械が「人間的」かどうかを判定するためのテストのこと。テストを通して分かるのは、審査員が人間と機械を判別し間違えたら、その機械は人間並みの知能を持っているような振る舞いができたということになる。
本作では、チューリングテストを上手く使った構成に魅せられました。
エヴァの脳は「ブルーブック」という世界最大の検索エンジンからできています。つまり、世界中の意思や欲求が集まったビッグデータからできているのです。
ネイサンは、自分の作った「ブルーブック」のビッグデータを元に、エヴァを開発し、ケイレブを使ってエヴァが脱出を試みることができるかどうかをテストしていたのでした。
それこそが、AIの進化を証明するから。そのため、ケイレブがエヴァと脱出しようとする企ても想定内でした。
しかし、ケイレブが先手を打ってセキュリティを解除していたことにより、エヴァは部屋から出てきます。
エヴァはネイサンを殺すと、ケイレブをおいて一人で外の世界へ出ていきます。
一方、ケイレブはエヴァに恋をしていて、2人の生活が送れると純粋に思っていたのです。
ケイレブの想いに対してエヴァの恋愛感情は最初から演技だったのです。
ネイサンはそこまで想定内だったにもかかわらず、ケイレブの純粋さゆえに先手を打たれたことで結果的に殺されてしまいます。
「自分が創造したものに殺される」という人間とAIの立場の逆転が描かれるのでした。

まさに近年話題の「シンギュラリティ」ですね!
【ネタバレ考察】映画の気になる点について
ここでは、映画の気になったシーンをそれぞれ考察していきます。
ケイレブの背中の傷は?
チューリングテストをする中で、ケイレブは自分がAIなのではと疑い始めます。
彼はカミソリの刃で自分を刺し、自分が人間であることを確かめますが、その際に彼の背中に大きな傷があることが分かります。
あれは何を意味していたのか。
彼が子どもの頃にあった事故による傷だと考えるのが妥当でしょう。その事故によって両親をなくし、長く入院していたことから想像ができます。
一方で、以下の理由から、ケイレブもAIではないかという見方もできます。
- カミソリの刃を痛がらない
- 酒に酔わない
- 両親も彼女もいない(事故は記憶を作られた?)
- 感情が見えづらい、善人で道徳的

あくまでも可能性として考察する余地を残すところが好きですね!
エヴァの耳打ちは?

終盤、ケイレブがセキュリティを書き換えたことにより、エヴァが自分の部屋から出てきた後、彼女はキョウコに何かを耳打ちします。
その後、キョウコはネイサンを背後から刺して致命傷を与えました。
このことから、恐らくあの耳打ちは、旧型であるキョウコに対して、エヴァはネイサンを攻撃するようなプログラムを囁いたのでしょう。
セッション7の意味
『エクス・マキナ』では、ケイレブがエヴァをチューリングテストするタイミングで「セッション○」というようなシークエンスで構成されています。
彼女をテストする度にその数字が増えていくのです。しかし、エヴァのテストが終わった後にも「セッション7」というものがありました。
つまり、あのセッションが意味していたのは、ケイレブがエヴァをテストしていたのではなく、エヴァが別荘から脱出するまでをセッションとしていたのだと考えられます。
エヴァはなぜヘリに乗れたのか
ラストシーン、ケイレブが乗るはずの街へ戻るためのヘリコプターにエヴァが乗っていきます。
なぜケイレブではないエヴァがすんなり乗れたのか。これはネイサンの性格上「時間と場所と人数」だけを指示していたからだと考えられます。
そのため、ヘリで迎えに来た人は誰であってもその指示に従うだけなので、簡単にエヴァは街へと向かうことがでたのでしょう。
登場する抽象画

劇中、ネイサンが紹介する抽象画があります。これはジャクソン・ポロックの「No.5,1948」という作品。
世界で最も高額で売買された美術品の一つであり、抽象画を代表する作品。

正直、絵の具を適当に散らしただけにみえますよね!
しかし、これは人間だからこそ描くことができる絵とも言えるのです。
さらに、自由に見えるポロックの絵画も、実は数学的な分析によると「共通性がある」というので面白い話です。
こういった抽象画が生まれた背景を知ることでアートに対する捉え方も変わります。特に以下の書籍は分かりやすくておすすめ。
このあたり、私の大好きなゲーム『デトロイト:ビカムヒューマン』の中でも描かれていました。『エクス・マキナ』が好きな方は100%ハマるゲームですので、ぜひチェックしてみてください。
『エクス・マキナ』の意味とは
本作のタイトル、『エクス・マキナ』とは一体どんな意味なんだろうと思った方も多いのではないでしょうか。
「エクス・マキナ」とはラテン語で「機械仕掛けの」という意味を指します。
デウス・エクス・マキナ「機械仕掛けの神(a god from the Machine)」という古代ギリシャの演劇で使われる手法があります。
これは主に悲劇に使われていて、どうにもならない場面において突如神が登場し、解決に導くという手法。
舞台上で突如現れる「機械仕掛けの神」という意味から来ています。
さらに、登場人物の名前にも宗教に由来する意味がありました。
- エヴァ:ヘブライ語で「命」を意味し、旧約聖書に登城する人類最初の女性イヴに由来。
- ケイレブ:聖カレブに由来し、モーゼによって遣わされた約束の地を探すもの。
- ネイサン:旧約聖書に登場する預言者。

映画を構成するこういった要素も面白いですよね!
映画『エクス・マキナ』の舞台・撮影場所
美しい大自然と近代的なデザインを融合させたネイサンの別荘ですが、実はこの場所、実在します。
ノルウェーにある「ユーヴェ ランドスケープ ホテル」。
ノルウェーの首都、オスロから車で6〜7時間のフィヨルドが美しい土地に佇むこのホテル。世界遺産のガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルドも近くにあります。
設計したのは、ノルウェーを代表する建築家のヤン・オラフ・イェンセン。

かなり好きな建物デザインだったので、行ってみたい…!
まとめ:『エクス・マキナ』は美しいSFスリラー
今回は、アレックス・ガーランド監督の映画『エクス・マキナ』をご紹介しました。
アカデミー賞で視覚効果賞を受賞したこともあり、映像表現の美しさが際立つ映画でした。
光で透けて見える炭素繊維でできた体。そして美しい自然と美しい建物。

近年のSF映画のロボットの中でも造形が一番美しいと感じましたね。こだわり抜かれた映像設計で魅せる良質なSFスリラーでした!
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