今回ご紹介する映画は『罪の声』です。
土井裕泰監督による作品で、かつて日本を震撼させた実在の事件を元にした原作を映画化。
主演には小栗旬さんと星野源さんが配役。
本記事では、映画『罪の声』のネタバレありの感想と解説、考察をしていきます。

重厚で濃厚な一本となっていました!
映画『罪の声』の作品情報とあらすじ
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『罪の声』のスタッフ・原作
土井裕泰監督

本作を手がけた土井監督は、TBSのエースディレクターとして活躍している監督で、これまでにも数々のヒットドラマを打ち出してきました。
主な監督作
- 『いま、会いにゆきます』2004年
- 『涙そうそう』2006年
- 『ハナミズキ』2010年
- 『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』2012年
- 『映画 ビリギャル』2015年
- 『花束みたいな恋をした』2021年
上記の監督作をみても、かなりのヒットメーカーであることがわかりますよね。
脚本:野木亜紀子
映画化した本作の脚本には野木亜紀子さん。
『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』など、ヒットドラマを手がけた脚本家であり、映画においても『図書館戦争』『アイアムアヒーロー』など原作のある映画化の脚本でも成功しています。
原作:塩田武士『罪の声』
原作は塩田武士さんによる2016年の小説『罪の声』。
新聞記者の経験がある塩田さんが学生時代から構想し、15年の歳月を要した原作は、塩田さん自身による徹底した取材を元に書き上げられています。
『罪の声』のキャスト
キャスト | 役名 |
---|---|
小栗旬 | 阿久津英士 |
星野源 | 曽根俊也 |
松重豊 | 水島洋介 |
古舘寛治 | 鳥居雅夫 |
市川実日子 | 曽根亜美 |
火野正平 | 河村和信 |
宇崎竜童 | 曽根達雄 |
梶芽衣子 | 曽根真由美 |
宇野祥平 | 生島聡一郎 |

ご覧のように、本作は登場人物が非常に多いです!
さらに言うと、基本的な流れが取材して新たな情報を得て、さらに取材するという形のなので、関係性を整理する上で相関図を次の項目で紹介します。
『罪の声』相関図

罪の声の主な登場人物の相関図です。物語を整理する上で参考にどうぞ。
【ネタバレ感想/考察】時効となった未解決事件を追う意義

『罪の声』は昭和最大の未解決事件と言われている「グリコ・森永事件」を題材にしています。
そのため、原作小説や映画の本作もフィクションではありますが、発生日時や場所、挑戦状の文言や報道された内容などに関しては史実を忠実に描いています。
これが『罪の声』の面白い点のひとつであり、フィクションと事実が入り混じり、その境界線が曖昧になっているのです。
なぜ、時効となった未解決事件を描くのか
本作は、新聞記者として事件を追う阿久津英士と、自分の声が事件に使われたことで、知らぬ間に事件に関与しているかもしれないと知ったテーラーの曽根俊也の二人が、それぞれに事件を調査していく軸で進んでいきます。
そんな二人が交錯する、劇中でも特に印象に残るシーン。
阿久津英士「真実を明らかにすることに意義がある」
曽根俊也「どんな意義ですか。面白おかしく記事にして、子どもの未来はどうなるんです」
映画「罪の声」より
ここに本作のテーマが現れているように感じます。
塩田武士さんが原作を執筆する際に、「事件の真相を追うこと」に囚われてしまいそうになったとインタビューで話しています。
しかし、過去の事件をいま描くことの意味はそこではないと気づいたのでした。
事件の真相にフォーカスしたのではない

それでは、本作はどこに焦点を置いたのか。
それは「時効となった未解決事件の真相に迫った作品」ではなく、「声を使われて事件に巻き込まれてしまった子どもの人生」に焦点を置いたのでした。
一方で、未解決事件の真相への追求も捨てずに、新聞記者の阿久津に真相を迫らせて、テーラーの曽根俊也に「テープの子ども」として当事者の役割をもたせているのです。
これにより2つの視点で事件に迫っていくコントラストが生まれ、非常に見応えがある物語となっています。
実際に、物語の前半で、阿久津と曽根俊也がそれぞれ調査していくシーンの面白さも際立っています。
記者ならではのアプローチをする阿久津と、事件に関与した可能性を訴えて話を引き出す曽根俊也が交互に描かれていく語り口。
それによって引き出される内容にも変化があり、中盤で2人が交錯し、しだいにバディ化していく流れでグッと面白くなってくるのです。
さらに、阿久津の設定も見事です。
彼はもともと社会部の新聞記者として働いていましたが、取材を通して記事にすることで、消費するだけの報道となっていた過去への自覚があることを吐露するのです。

本作、そして原作自体がこの構造になっているのが面白いですよね!
つまり、阿久津にとってこの事件は、曽根俊也に問われた「事件を追うことの意義」を見つけるものでもあるのです。
テープの子どもの過去

『罪の声』が事件に巻き込まれた子どもの人生を描いたことで、劇中でも非常に胸に迫るシーンがあります。
それは「テープの子ども」である生島望と生島聡一郎の2人の人生。
真相に迫っていく阿久津と曽根俊也は、ついに当事者である生島聡一郎と接触することができるのでした。
しかし、同じ「テープの子ども」としてたどり着いたものの、生島家があまりも自分とは違う壮絶な人生を歩んでいたことを知るのです。
生島聡一郎から言われる「曽根さんはどんな人生だったのですか?」という質問の重みに、曽根俊也は感じる必要のない罪の意識を抱いてしまうのです。
そんな「テープの子ども」たちの現在の姿をみた阿久津は、揺らいでいた「事件を追うことの意義」を確かなものへとしていくのでした。

この流れが見事です!
本作は、映画的に言ってしまえばかなり地味です。犯人を追い詰めるハラハラした展開や、カーチェイスなどもありません。
しかし、取材して新たな事実を得て、さらに取材するというものの繰り返しにもかかわらず、それが単調になっていないのです。
階段を上がっていくように展開していく構成は見事で、これだけのストーリーを142分にまとめられるのは本当にすごいです。
野木亜希子さんの脚本力と土井裕泰監督の手腕が光った秀逸な一本でした。
まとめ:深みのある邦画の良さが現れた良作
以上、『罪の声』をご紹介しました。
テレビ局製作で豪華キャスト人による大作映画ですが、非常に丁寧に描かれていてボリュームのある内容を見事にまとめています。
主演の小栗旬さんと星野源さんも、役柄を噛みしめるような味わい深い演技をしていて物語を彩っていました。題材となった「グリコ・森永事件」についての予備知識があるとなお楽しめると思います。
邦画の持つ良さを感じられた重厚な人間ドラマに仕上がっていました。
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