『ちょっと思い出しただけ』ポスター

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映画

【ネタバレ感想/考察】『ちょっと思い出しただけ』過去を肯定し背中を押すコロナ禍の傑作

今回ご紹介する映画は、『ちょっと思い出しただけ』です。

松居大悟監督による作品で、クリープハイプの楽曲にインスパイアされて生まれた作品。

二度と戻れない愛おしい日々を、ふと思い出したように、時間を巻き戻して描いています。

本記事では、映画『ちょっと思い出しただけ』を観た私の感想を、ネタバレありで解説・考察していきます。

まめもやし

私にとって松居大悟監督の作品で一番好きな映画となりました!

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『ちょっと思い出しただけ』の作品情報とあらすじ

『ちょっと思い出しただけ』

『ちょっと思い出しただけ』ポスター

5段階評価

ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :

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あらすじ

照明スタッフの照生と、タクシードライバーの葉。物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日・・・コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている。そんな日々を”ちょっと思い出しただけ”。

作品情報

タイトルちょっと思い出しただけ
監督松居大悟
脚本松居大悟
出演池松壮亮
伊藤沙莉
大関れいか
屋敷裕政(ニューヨーク)
広瀬斗史輝
成田凌
市川実和子
神野三鈴
鈴木慶一
國村準
永瀬正敏
尾崎世界観
撮影塩谷大樹
音楽主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」
編集瀧田隆一
製作国日本
製作年2022年
上映時間115分

予告編

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おすすめポイント

戻れない“あの頃”の思い出を「ちょっと思い出しただけ」。

別れを迎えた男女が過ごした6年間の“ある一日”を、遡るようにして映し出した映画。

クリープハイプの尾崎世界観さんが、オールタイムベストに挙げるジム・ジャームッシュ監督の映画『ナント・オン・ザ・ブラネット』に着想を得て書き上げた楽曲『ナイトオンザプラネット』

その楽曲にインスパイアされた松居大悟監督が、オリジナルの脚本を書き上げて自身で映画にしたのです。

決して今が悪いわけではないけれども、過去に思いを馳せてしまう瞬間は誰にでもあると思います。

コロナ禍で生まれた楽曲と映画でもあり、劇中でもマスクを着用したコロナ禍の様子が描かれていたり、恋愛だけではなくコロナ以前の失った日常の記憶も思い出させるのです。

当然クリープハイプの楽曲との親和性も高く、鑑賞後には誰もが各々の愛おしい記憶をちょっと思い出していることでしょう。

まめもやし
日本の新たな恋愛映画の傑作が誕生しました!

ネタバレあり

以下では、映画の内容に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【ネタバレあらすじ】“ある1日”だけで遡るふたりの6年間

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

『ちょっと思い出しただけ』の物語は、時系列が遡って描かれるため、予備知識ゼロだと少し混乱してしまうかもしれません。

まめもやし

分かりやすいように、話の構造を先にお伝えしておきます!

物語は、2021年7月26日の現在から始まります。

2021年7月26日

照明技師の仕事をする照生(てるお)は、高円寺の劇場「座・高円寺」での仕事を終え、人のいないステージでダンスを踊っていた。

一方、タクシードライバーの葉(よう)は、尾崎世界観さん演じるミュージシャンを乗せ、トイレに寄りたいという彼を降ろすために「座・高円寺」に停車。

彼を待つ間、劇場内に入った葉は、誰もいないステージで、一人踊る照生の姿を目撃する。

そして、そこから時が遡っていき、同じ7月26日の様子を、1年ずつ順番に巻き戻して描かれるのです。

まめもやし

断片的に時間が巻き戻されていく様子は、クリストファー・ノーラン監督『メメント』のようなイメージですね!

ジム・ジャームッシュ『ナイト・オン・ザ・プラネット』へのオマージュとして、場面の切り替わりとなる、時間を遡るタイミングで時計が映されます。

『ちょっと思い出しただけ』『ナイト・オン・ザ・プラネット』時計の比較

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会(画像上)
© 1991 Locus Solus Inc.(画像下)

『ナイト・オン・ザ・プラネット』では、「世界の5都市の夜のタクシー内の物語」を描いていましたが、『ちょっと思い出しただけ』では「2人の恋愛における同じ誕生日の6年間」を描いています。

まめもやし

『ナイト・オン・ザ・プラネット』を横軸とすると、『ちょっと思い出しただけ』は縦軸なんですよね。この切り口にやられました !

しかし、「何年の7月26日なのか」が示されないため、映像による情報から観客が補完するしかありません。

松居監督は“あえて”年号を入れていないと話していましたが、これを面白いと思えるかが、本作の一つのポイントでもありました。(実際、時系列が混乱してしまう人もいると思います。)

私たち観客は、2人の思い出を追体験する形で、部屋の様子やプレゼントなどのアイテムを通して2人の記憶に触れていくのです。

まめもやし

確かに分かりづらいですが、やっぱりこれが面白いんですよね!

過去の2人の様子をおさらいしていきます。

2020年7月26日

一人ベッドで目覚めた照生は、愛猫のモンジャが押入れから出してきた「バレッタ(髪留め)」を手にし、髪の毛を切りに行く。

その帰り道、後輩のダンサー、泉美(河合優実さん)に出会い、行きつけのスナックで誕生日を祝う。

一方、葉は友人に誘われた合コンに参加し、その時に店の外で出会った康太(ニューヨーク屋敷さん)と意気投合し、LINEを交換。

彼に指摘された通り、アイコンにしたままだったモンジャの写真を変更する。

2019年7月26日

2週間も連絡が返ってこない照生を心配した葉は、タクシーで彼の稽古場へ迎えに行く。

照生は足をケガし、ダンスができるかどうかの瀬戸際で、不意に葉を傷つけてしまわないように気持ちを整理したいと距離を取っていた。

一方の葉は、辛いときも一緒に支え合いたかった

言葉にしなくても伝わることがあると思う照生と、言葉にしないとわからないと感じる葉。2人の思いはすれ違っていく。

葉は、一緒に食べるつもりで買った、誕生日プレゼントの「海洋生物のケーキ」を渡して去っていくが、照生も彼女を追いかけることはなかった。

2018年7月26日

ベッドで目覚める2人。葉は照生に「バレッタ」をプレゼントし、照生も喜んだ。

照生のバイト先である水族館に忍び込んでデートしたり、私用でタクシーを使ったデートをし、自宅では映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』のDVDを観ながらケーキを食べる。

ふと「来年の誕生日プロポーズしよう」とつぶやく照生に対して、葉も嬉しさを隠せない様子で、幸せな時間を過ごした。

2017年7月26日

葉は照生とのあやふやな関係を嘆いていた。

それでも決心し、雨が降りしきる中、プレゼントを渡しに行くも、照生が後輩の泉美からプレゼントをもらっている場面を目撃してしまい、その場から逃げ出してしまう。

しかしその後、ずぶ濡れになりながら公園で妻を探すジュン(永瀬正敏さん)の姿と、彼を手伝ったことで、もう一度照生に会いに行くことを決心する。

照生のバイト先の水族館で、関係をはっきりしたいと言う葉に対し、照生は優しく抱きしめる

2016年7月26日

葉は、照生がダンサーの一人として出演した舞台を観劇し、その後の懇親会で2人は初めて会話する。

些細なきっかけで2人は一緒に帰ることになった2人。

高円寺のガード下で弾き語るミュージシャンを前に、「どうせもう会うことはないなんだから」と言ってダンスを踊る。

2021年7月26日

そして時は現在、2021年7月26日に戻る。

すでに別れてから時間が経過している照生と葉の2人。そんな2人が、出会いの場所でもある高円寺で居合わせていた。

照生がステージで踊る姿を見て、葉は高円寺のガード下で踊った“あの瞬間”に重ねていた

一方、照生はトイレから戻ったミュージシャンを乗せるタクシーが、葉の運転だと理解している様子だった。

その後、スナックで誕生日を祝ってもらった物思いにふけっていると、マスターから「何考えてるの?」と聞かれ、「ちょっと…」と言うのだった。

【ネタバレ感想】変化を補完して楽しむことができる

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

『ちょっと思い出しただけ』は、“ある1日”を時間を遡って描いていきます。

観客は「すでに別れてしまった照生と葉の姿」を知った状態で、1年ずつ彼らの記憶を辿っていくのです。

観客が補完できる変化の様子

1年ずつ切る取ることで、その変化を映像から補完して楽しむことができるのも魅力のひとつです。

具体的なポイントを挙げてみます。

  • 部屋の荒れ具合
  • 猫のエサや成長
  • マスクの変化
  • タクシーの変化

2人で暮らしていた時は部屋もキレイだったけど、照生ひとりでは散らかったり、猫に与えるエサの量も適当すぎたり。

葉のマスクが2020年ではアベノマスクになっていたり、運転するタクシーも東京オリンピックのUDタクシーになっていたり。

まめもやし

こういった、小さな変化から時間の経過(逆行)に気づけるのが面白いところ。繰り返し観たくなる!

また、1年ずつ遡ることで、全体を通して観たときの伏線になるところも面白いです。特徴的なのはプレゼントです。

誕生日プレゼント

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

例えば、髪留めのバレッタ

最初は床屋の人が言うように、葉の私物かと思っていたら、それは葉が照生にプレゼントしたものだと後に分かります。

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

同様に、ケンカ別れして照生が一人で食べるケーキも、後に照生が水族館でバイトしていたこと、そして水族館での美しいデートがあったからあのケーキなんだと分かります。

ケーキには2人分のスプーンが入っていました。

照生がケーキを食べている場所は恐らく都庁前で、ダンスを踊る学生、老夫婦、ホームレスなど、いろんな人たちが行き交う中で、一人で食べるシーンが切ないんですよね。

このように、1年ごとに小出しにして断片的に描かれることで、観客も2人の思い出を追体験して“ちょっと思い出しながら”観ることができるのです。

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会
まめもやし

2人が付き合い始める頃のプレゼント、ピロピロ(吹き戻し)のおもちゃも、ちゃんと部屋に飾って取ってありましたね!

本作で描かれるストーリーは、別れた男女があるきっかけをもとに、当時の愛おしい時間をまさしく「ちょと思い出しただけ」の話になっているのです。

言ってしまえばそれに尽きる話なので、大恋愛の様子やドラマチックな場面は特にありません。

まめもやし

でもそれこそが、本作の最たる魅力になっているんです!

【ネタバレ考察】切り取る1日と、描かない余白の364日

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

『ちょっと思い出しただけ』が素晴らしいのは、まさしくタイトル通りの物語である点と、その描き方の妙に尽きます。

タイトルに関しては後述しますが、“ある一日”に焦点をスポットライトを当てた描き方が絶妙にハマっているんですよね。

「誕生日」にスポットライトを当てる

「一年のある日にちを切り取って描いた」作品は、本作に限ったものではありません。

  • 『ワン・デイ 23年のラブストーリー』
    →7月15日を23年に渡って描いた作品
  • 『弥生、三月 君を愛した30年』
    →3月を30年に渡って描いた作品

上記のように、アン・ハサウェイの『ワン・デイ 23年のラブストーリー』や、本作にも出演している成田凌さんの『弥生、三月 君を愛した30年』など、切り口自体は他作品でもやっています。

しかしながら、本作は“特別ではない一日”にスポットライトを当てることで、その余白を自由に補完できるのです。

その意味でも印象的だったのは、明確な付き合い始めと別れのシーンを描いていないこと

きっかけを感じさせる描写はありますが、あくまで本作は特定の一日を切り取った物語。

恋愛映画の一番の題材でもある「告白と別れ」が明確に描かれていないんですよね。

似た映画として挙げられる『花束みたいな恋をした』では、対照的に明確な「告白と別れ」のシーンが描かれていました。

まめもやし

“花恋”における、ファミレスの別れのシーンはハイライトな場面でもありましたね!

当然ながら、2人の日常は7月26日以外も存在しています。その「余白」を想像させる1日が「誕生日」になっているところも絶妙でした。

まめもやし

それぞれの1日では、ドラマチックな場面が描かれませんが、それがあっただろうと想像させるんですよね!

恋人を演じる2人

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

池松壮亮さんと伊藤沙莉さんの演技の自然さが非常に心地いい本作でしたが、劇中で2箇所、露骨にセリフを感じさせるシーンがありました。

それが、恋愛の始まりと終わりの予感がするシーン

「伝えたら、壊れちゃうんじゃないかと思って」
「恋愛映画みたい」

明確な告白こそ描かれませんが、2人の恋愛が始まったことを想像させます。

一方、別れを想像させるシーンも、どこかよそよそしい。

「お客様、到着しました。降りて下さい。料金は〇〇円です。」

すれ違っていく2人の様子が確認できる最後のやり取りでもありました。

そして、その中で、葉が言ったセリフが印象的に刺さります

「ずっと会話になんてなってなかったのかもね、ずっと…」

葉のこの言葉の後、その1年前に「プロポーズ宣言」する照生と喜ぶ葉の姿が映し出されるのが切ないのです。

そもそも、2人のタイプは正反対とも言えるものでした。

言葉で意思疎通したい葉と、言わなくても伝わることがあると考える照生。

バーのマスター(國村隼さん)が「男なんてみんな、夢に恋してんだよ」と言っていましたが、照生はまさしくそれに当てはまっていました。

どんな照生でも一緒になって支えると言う葉に対し、照生は自分の夢を2人の夢にすることができなかった。

劇中、照生と葉の2人は、ジム・ジャームッシュの映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』の役を真似て演じていたのが印象的でした。

異なる性格の2人は、もしかすると、葉の言葉通り「恋愛映画みたい」に演じているだけで、本当の意味での会話になっていなかったのかもしれません

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

しかし、だからこそ最後、2人が思い出す「高円寺のダンスの瞬間」を舞台上で踊る2人の現在に重ねていたのではないでしょうかね。

まめもやし

めっちゃ切ない…!

その一方で、葉が居酒屋の前で出会う康太(ニューヨーク屋敷さん)とのシーンは対称的に映ります。

ラストでは、葉が康太と結婚して子供がいることが分かるのでした。

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

康太は照生とは対照的に、堂々と葉に言葉で「絶対一生幸せにします」と伝えることができる人でした。

まめもやし

葉と康太の付き合い始めを想像させる出会いのシーンはとても自然なんですよね…!

ちなみに、ニューヨークの屋敷さん、アドリブもしくは素じゃないのかと思うほど自然で素晴らしかった!

待つ人がいるってことは、奇跡です

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

間に挟み込まれる永瀬正敏さん演じるジュンの話も、少し分かりづらいものの、描き方の切り口によって絶妙に働いているのです。

ジュンは、愛する妻を亡くしてしまい、公園のベンチで待ち続けていました。

当然ながら、待ってても彼のもとに亡き妻が現れることはありません。

しかし、語り口が1年ずつ巻き戻されていくため、雨の日にずぶ濡れになりながらも妻と会えたジュンが、まるで亡き妻と再会を果たしたように映るのです。

まめもやし

この描き方にはしびれました!永瀬さんの「やっと会えました」がいいんですよね…

【ネタバレ考察】楽曲に寄り添う丁寧で大人な映画

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

尾崎世界観さんのジム・ジャームッシュへの熱量

ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』からインスパイアされて生まれた、クリープハイプの楽曲「ナイトオンザプラネット」

尾崎世界観さんは、この映画をオールタイム・ベストに挙げるほど思い入れが深い映画だと語っています。

実は、「クリープハイプ」というアーティスト名も、『ナイト・オン・ザ・プラネット』のニューヨーク編に登場する、ジャンカルロ・エスポジートが演じるヨーヨーの口癖「Hyp(ハイプ)」に由来しているんです。

『ナイト・オン・ザ・プラネット』ハイプのシーン

© 1991 Locus Solus Inc.

さらに楽曲「ナイトオンザプラネット」の頭の歌詞である「夜にしがみついて、朝で溶かして」が、そのままアルバムのタイトル名になるくらい、この映画を題材にした楽曲であることの強い思いが感じられるのです。

まめもやし

この楽曲に込めた想いは並々ならないものを感じますよね!

雑誌「MUSICA」のクリープハイプ特集では、楽曲とアルバムへの深い熱量が伺えるので、合わせてチェックしてみてください!

そして、そんな楽曲「ナイトオンザプラネット」に松居大悟監督がインスパイアされて作られたのが本作『ちょっと思い出しただけ』です。

そのため、映画の内容が「ナイトオンザプラネット」の歌詞に非常に寄り添った内容になっていました。

歌詞と映画を紐解いてみていきます。

楽曲「ナイトオンザプラネット」と映画『ちょっと思い出しただけ』

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

クリープハイプの「ナイトオンザプラネット」の歌詞をみると、1番は男性視点で、2番は女性視点で描かれていることがわかります。

ナイトオンザプラネット額縁に入れたポスター
窓のそばの花のとなりに飾ってた
吹き替えよりも字幕で 二人で観たあの映画

クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」

映画の中でも、「吹き替えよりも字幕がいい」と照生が話していましたね。

ブラは外すけどアレは付けるから全部預けて
空は飛べないけどアレは飛べる
愛とヘイトバイト 明日もう休もう 二人で一緒にいたい

クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」

幸せな2人の時間を想像させる歌詞。男性目線です。

一方で、2番は対照的に女性目線の歌詞になっています。

あの頃と引き換えに
字幕より吹き替えで
命より大切な子供とアニメを観る
いつのまにかママになってた

クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」

字幕で観ていた映画が、吹き替えに変わっている。

映画もジム・ジャームッシュではなく、子供と観るアニメになっていた。

まめもやし

切なくも素晴らしい歌詞ですよね…!

映画のラスト、葉が居酒屋の前で出会った康太と結婚して子供もいることが分かるシーンに通じますね。

そして、後半の歌詞につながっていきます。

久しぶりに観てみたけどなんか違って

それでちょっと思い出しただけ

クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」

あの頃に観た映画と、時間も経過し環境も変わった今では、なんか印象が違ってみえる。

ただ、その映画を通して“あの頃”の記憶を「ちょっと思い出しただけ」

考えてみれば、映画のラストも同じ構造になっていましたね。

【ネタバレ考察】過去を肯定し背中を押すコロナ禍の傑作

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作

本作のラストが深い余韻を残すのは、戻れない“あの頃”の思い出に浸りつつも、悲しさを感じさせないことにあると思っています。

人間の記憶とは不思議なもので、忘れたくないことを忘れてしまったり、なんてことない日常が、ひょんなことをきっかけに蘇ることが往々にしてあります。

2人は結果的に別れてしまいましたが、積み重ねた思い出は決して無駄なものじゃない。

時計の針は否応なく進んでいき、時代も環境も目まぐるしく変わっていく。

そんな中で、ふとした瞬間に立ち止まり、“あの頃”を思い出してしまう夜もある。だからといって今が決して悪いわけじゃない。

少しでもちゃんと前に進んでいる。ただ、「ちょっと思い出しただけ」なんだと。

そして何より、本作が似た恋愛をした人だけに共感性がある物語でないことが素晴らしい。

『花束みたいな恋をした』は、長く付き合った経験のある人には絶大な共感性の高さがありましたが、そうでない人は自分事に感じられない人もいたと思います。

一方で、本作は決して長く付き合った経験や恋愛に限らず、戻ることのできない恋愛を描きつつも、本題は「ちょっと思い出しただけ」なんです。

コロナ禍で日常が失われ、マスクをしていなかった世の中や、気兼ねなく会話や飲食ができたりと、誰もが“なんてことない日常”を愛おしく感じたと思います。

そんな誰もが思い当たる、過去に想いをはせる瞬間を肯定し、背中を押してくれる。だからこそ一層胸に響く映画でした。

まめもやし

コロナ禍で生まれた楽曲と映画だからこそだったのだと感じます!

この映画ができるまでのメイキング映像もぜひみておいてください。

【補足】本家『ナイト・オン・ザ・プラネット』へのオマージュなど

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

本作はジム・ジャームッシュ監督の映画へのオマージュが散りばめられていて、面白いポイントでもありました。

もちろん、ジム・ジャームッシュの映画を観ずとも十分に楽しめるのですが、合わせて観ておくと楽しめますし、ジム・ジャームッシュの映画を「ちょっと思い出して」ニヤニヤできます

最後に、補足として印象的なオマージュ部分を簡単に紹介します。

『ナイト・オン・ザ・プラネット』のロサンゼルス編における、ドライバー役のウィノナ・ライダーと乗客ジーナ・ローランズのやり取りは、目立ってオマージュされていました。

照生と葉が真似していた整備工の話以外にも、

  • タクシーのドアを閉めようとして足を挟みかける
  • サンバイザーにラッキーストライク
  • 耳にタバコをかける
  • 葉が女性に仕事に誘われるシーン など
まめもやし

小さいオマージュが散りばめられて、作品を見ている人はさらに楽しめるものになっていました!

『ちょっと思い出しただけ』

(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会

その他では、葉が乗せた、酔っぱらい3人組。その内の1人が離婚したといっていましたね。これは『ナイト・オン・ザ・プラネット』ヘルシンキ編を彷彿とさせます。

ちなみに、この離婚した人が、実は照生の住む家の前の住人だったことが分かるという小ネタもありましたね!

さらには、ジム・ジャームッシュ監督作品『ミステリー・トレイン』『パターソン』に出演した経験がある永瀬正敏さんが出演していること自体も面白い。

『ちょっと思い出しただけ』『パターソン』永瀬正敏

(C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.(画像上)
(C)2022「ちょっと思いだしただけ」製作委員会(画像下)
まめもやし

本作をきっかけに、ジム・ジャームッシュ監督の以下の映画を観てみると面白いと思います!

  • 『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991年)
  • 『ミステリー・トレイン』(1989年)
  • 『パターソン』(2016年)

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まとめ:創作が創作をつないだコロナ禍の傑作の誕生

今回は、松居大悟監督の映画『ちょっと思い出しただけ』をご紹介しました。

映画から楽曲が生まれ、楽曲からまた映画が生まれる。作品と作品がつながり、新しい創作物が生まれていく。

コロナ禍で生まれた楽曲と映画が、コロナ禍以前の当たり前だった日常を思い起こさせる。

まめもやし

恋愛だけじゃない、誰もが自分にとっての愛おしい記憶を「ちょっと思い出して」しまう、素敵な映画でした!

お読みいただきありがとうございます。

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