今回ご紹介する映画は『思い、思われ、ふり、ふられ』です。
通称“ふりふら”と呼ばれて、別冊マーガレットにて連載していた原作マンガを三木孝浩監督が映画化した本作。
高校生の男女4人が織りなす恋愛のあれこれを、単なる恋愛だけではなく、恋愛を通して自分と向き合うきっっかけを与えてくれる美しくも優しい作品でした。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』の作品情報とあらすじ
作品情報
原題 | 思い、思われ、ふり、ふられ |
---|---|
監督 | 三木孝浩 |
原作 | 咲坂伊緒 |
出演 | 浜辺美波 北村匠海 福本莉子 赤楚衛二 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2020 |
上映時間 | 124分 |
おすすめ度 | [jinstar3.5 color="#ffc32c" size="16px"](3.5点/5点) |
あらすじ
積極的で社交的な性格だが、自分の気持ちをうまく表現できない朱里、恋愛に消極的で自分に自信のない由奈、朱里の義理の弟・理央、由奈の幼なじみの和臣は、同じマンションで暮らし、同じ高校に通っている。
由奈は理央に憧れていて、理央は姉の朱里に好意を抱いていた。
『思い、思われ、ふり、ふられ』スタッフ・キャスト
恋愛映画の名手、三木孝浩監督
出典:https://furifura-movie.jp/
本作を手がけた三木孝浩監督はこれまでに、長編映画初監督作品である『ソラニン』に始まり、『僕等がいた』『アオハライド』『ぼくは明日、昨日の君とデートする』などといった青春映画を撮ってきました。
恋愛映画の名手とも言われている方で、少女マンガ原作の映画化を非常に上手く映し出している印象があります。
今作に関しても、原作が全12巻ある内容を2時間にまとめて描いて落し込んでいました。
印象的なのは映像の美しさ。特に雨の描き方と淡い光の映し方がとても綺麗で、青春の1ページを単にキラキラしたものだけじゃなく風景で伝えるのが見事でした。
咲坂伊緒によるマンガが原作
出典:https://www.imdb.com/
本作は、別冊マーガレットにて連載していた咲坂伊緒による同名コミックスが原作。
- 『ストロボエッジ』
- 『アオハライド』
- 『思い、思われ、ふり、ふられ』
上記の3つが咲坂伊緒の青春三部作と呼ばれていて、リアルに揺れ動く青春の心情を描いた作品となっています。
【朱里】浜辺美波
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明るく社交的で恋愛経験もある朱里役には浜辺美波。
浜辺美波と北村匠海は2017年の映画『君の膵臓をたべたい』で共演して話題になりましたね。
最近は明るく天真爛漫な役柄をやることも増えてきて、今作でもそれが活かされていました。
その中で、ふとした時の目線や奥に抱えた心情が読み取れるシーンが印象的でした。
滑舌が良くないとも言われたりする彼女ですが、舌に引っかかるような喋り方が個人的には好きなんですよね。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 劇中に登場するポートレート写真をとるシーンが殺人級に可愛かったです。 [/chat]
【理央】北村匠海
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理央役には北村匠海。
アンニュイな表情が特徴的な彼は本作の理央役にはピッタリだったように感じます。
個人的に北村匠海の声が好きで、本作のような言葉にできない心情を語るような作品と相性がいいように感じます。
【由奈】福本莉子
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夢見がちで自分に自信を持てない性格の由奈約には福本莉子。
彼女は東宝シンデレラオーディションでグランプリとなり芸能界入りしました。
引っ込み思案で挙動不審な仕草がすごく自然で上手かったです。主要キャストとなった本作は彼女にとっても大きな成長の一本となりそうです。
【和臣】赤楚衛二
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由奈の幼なじみで天然だけど真っ直ぐな男、和臣約には赤楚衛二。
Amazonプライムビデオ『仮面ライダーアマゾンズ』やその後の『仮面ライダービルド』に出演。
知名度はそこまで高くないですが、今後の活躍が期待される若手俳優の一人です。
テーマ曲はOfficial髭男dism「115万キロのフィルム」
本作の主題歌は「ヒゲダン」ことOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」です。
ウェディングソングとしても人気のこの楽曲は、何気ない瞬間も大切な思い出として心に残しておこうというメッセージを映画に例えて歌った楽曲です。
ちなみに、115万キロというのは映画のフィルムが1秒記録するために約457ミリ必要ということから、115万キロ=80年分、つまり人の一生を表しています。
好きな人との思い出を逃さないように一生分記録したいという思いが込められています。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 最初は“ふりふら”に合わせて作曲したと思ったくらいにピッタリ世界観がマッチしていました [/chat]
【ネタバレ感想】内面を丁寧に描いた良作
出典:https://furifura-movie.jp/
※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
異なる4人の男女が紡ぐ恋愛模様
本作は主要登場人物4人が、それぞれ異なる恋愛模様を展開させていくところに魅力があります。
まず、スタートとなる4人の思いの矢印を見ていきます。
- 朱里:過去に恋愛もしてきたが、リアリストな一面がある。両親の再婚によって理央が義理の弟となる。
- 理央:幼い頃に朱里に恋心を抱いていたが、告白できずに彼女が義理の姉になってしまう。
- 由奈:夢見がちで引っ込み思案で、絵本に登場した王子様と似ていた理央に恋をする。
- 和臣:由奈と幼なじみで、同じマンションに引っ越してきた朱里に思いを寄せていく。
この作品でキーポイントとなってくるのが、朱里と理央の親が再婚したことによってクラスメイトだった2人が姉弟となるという点です。
それによって理央は朱里への思いを伝えることができず、姉弟という関係上、告白すらできないことになってしまうのです。
朱里は理央からの告白をあえて受けないようにし、家族の関係を守ろうとするのでした。
一方、それを理央本人から聞いた由奈は、理央への思いが実らないことを悟ることになります。
義理の姉弟になる設定とそれが明らかになるのがストーリーの前半だったことは原作が未読だったので少し意外に感じました。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 義理とはいえ、姉弟という関係で恋愛に発展してしまうというようなストーリーを想像していたのですがまったく異なっていましたね。 [/chat]
関係性を前半で明確にすることで、それによって生まれる心情や思いのかけ違いが丁寧に描かれていくので、しっかりと登場人物たちに感情移入できるようになっています。
【ネタバレ考察】青春の「思いのかけ違い」
出典:https://furifura-movie.jp/
本作は丁寧に登場人物たちの内面を描いていた一方で、それが高校生にしては大人すぎる感情に映り、そこから本来の高校生らしさを取り戻していく様子を描いているように感じました。
「みんなが幸せになる方法」
「みんなが幸せになる方法があればいい」という朱里の言葉にあるように、高校生にして大人びた思いがひしめき合っているんですよね。
- 朱里が家族の関係を崩さないために理央からの思いにフタをする
- 和臣は兄弟のバランスを保とうと自分の夢を諦めようと考える
上記のように、「傷つけたくない、壊したくない」という考えがあるからこそ自らの思いにフタをする選択をしてきた朱里と和臣。
和臣は兄が大学を辞めて役者を目指したことで自分の夢を諦め、バランスを取ろうとするのです。
一方で、由奈は叶わない恋をしてしまった理央からの言葉を受けて、自ら殻を破って一足先に成長していくのです。
だからこそ由奈が一番魅力的に映り、それをきっかけに自らのしがらみを乗り越えていく流れが朱里・理央・和臣へと波及していくのです。
子どもじみた親と大人びた子ども
そもそも、4人の間にあの関係性が生まれる根本的な原因が、親にあることが明白なんですよね。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] そもそもクラスメイトが姉弟になるというのは、たとえそれが気になる存在じゃないとしても嫌ですよね。 [/chat]
そんな親の都合に上手く合わせようとする子どもたちとは対象的に、親は好きなように恋愛し、感情をぶつけ合っているのです。
ある種、逆転したような親子の関係性が印象的でした。
そして、その着地点として「対話」することになっていましたが、それも由奈がきっかけになっているんですよね。
いわゆる青春映画っぽくないところがGOOD
『思い、思われ、ふり、ふられ』は、少女マンガ原作映画のいわゆるキラキラし過ぎたタッチで描かれることはなく、美しい映像と交差する4人の思いを丁寧に描いた作品でした。
「言葉にできない思い」というのは多くの人が抱えて生きていると思います。
それをみんなが幸せになるように振る舞うことが大人だと思っていた彼らが、静かにぶつかることで、雨が上がり、彼らの新しい人生の夜明けを迎えるのだと感じました。
繊細に心の機微を描いた良質な青春映画でした!