今回ご紹介する映画は『ピエロがお前を嘲笑う』です。
バラン・ボー・オダー監督による作品で、天才ハッカーのしかけた世間を騒がすイタズラが発展し、いつしか殺人事件の容疑をかけられ危険な世界へはまり込んでいくドイツ製スリラー映画。
先が読めない展開にマインドファック・ムービー(映画全体を覆すほどのトリックや結末が用意されている映画)と言われています。
本記事では、映画『ピエロがお前を嘲笑う』をネタバレありで解説していきます。
『ピエロがお前を嘲笑う』はプライムビデオで見放題!
映画『ピエロがお前を嘲笑う』の作品情報とあらすじ
『ピエロがお前を嘲笑う』
あらすじ
仲間をロシアのサイバーマフィアに殺され、自ら出頭した天才ハッカーの少年。彼はハッカー集団が起こした事件の全貌を語り始める…。
5段階評価
予告編
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作品情報
タイトル | ピエロがお前を嘲笑う |
原題 | Who Am I - Kein System ist sicher |
監督 | バラン・ボー・オダー |
脚本 | バラン・ボー・オダー ヤンチェ・フリーセ |
出演 | トム・シリング エリアス・ムバレク ヴォータン・ヴィルケ・メーリング アントニオ・モノー・Jr ハンナー・ヘルツシュプルンク シュテファン・カンプヴィルト トリーヌ・ディルホム |
撮影 | ニコラウス・スメラー |
音楽 | マイケル・カム |
編集 | ロバート・ルゼザッツ |
製作国 | ドイツ |
製作年 | 2014年 |
上映時間 | 106分 |
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おすすめポイント
ハッキングを擬人化したマインドファックムービー!
ドイツで大ヒットを記録した、ハッカー集団のサスペンス映画。監督はNetflixの傑作シリーズ『ダーク』を手掛けたバラン・ボー・オダー。
緩急のついた展開と、予想の裏をかくどんでん返しのラストに「ずるい」と思いながらも純粋に楽しめるサスペンス映画。
『ピエロがお前を嘲笑う』のスタッフ・キャスト
監督:バラン・ボー・オダー
名前 | バラン・ボー・オダー |
生年月日 | 1978年4月18日 |
出身 | スイス/ゾロトゥルン州 |
本作を手がけたのは、スイス出身のバラン・ボー・オダー監督。
複雑に絡み合ったストーリーが得意な監督の印象がありますね!
バラン・ボー・オダー監督が手がけた中では、Netflixドラマ『Dark ダーク』がめちゃくちゃオススメ。尋常ではないほどに複雑に絡み合った人間関係が、最終シーズンであるシーズン3で一気に伏線回収するドラマです。
『』のキャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
ベンヤミン(トム・シリング) | |
マックス(エリアス・ムバレク) | |
シュテファン(ヴォータン・ヴィルケ・メーリング) | |
パウル(アントニオ・モノー・Jr) | |
マリ(ハンナー・ヘルツシュプルング) |
ドイツ製の映画のため、出演者もドイツ出身の俳優がほとんどですね。
誰も知っているキャストはいない分、フラットに見ることができました!
【ネタバレ感想】どんでん返しはつまらない?
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
本作、正直な感想をいえば「結末のための映画」という印象でした。
というのも、宣伝でもマインドファック・ムービーなどと言われていて、「この映画にはダマサれますよ」というどんでん返しありきのストーリーになっているんですよね。
物語の大筋を簡単にまとめてみます。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
ある事件をきっかけに指名手配となったベンヤミンは出頭し、ユーロポールの捜査官・ハンナの取り調べを受け、ベンヤミンは自分について語り始める。
天才ハッカーであるベンヤミンは、宅配ピザのバイト中に初恋の女性マリに再会する。彼女が欲している大学の試験問題を盗むため、大学のサーバーに侵入するが、あっけなく逮捕されてしまう。
ベンヤミンは初犯のため、奉仕活動を命じられる。するとそこでマックスと出会う。マックスはベンヤミンのスキルを見込んで、シュテファンとパウルという仲間を紹介する。
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
4人はチーム「CLAY(クレイ)」を設立し、さまざまな企業や団体にハッキングを仕掛け、世間を騒がせていく。
彼らの目的は、ハッキング界のカリスマ・MRXの関心を引き寄せるためだった。しかしMRXは無反応。そんな中、ユーロポールではロシアのハッカー集団「FR13NDS(フレンズ)」が注目を集めていた。
ある時、MRXがCLAYから連絡が入り、ユーロポールの捜査資料を送りつけてくる。その資料では、ユーロポールがCLAYのことを認知しつつも、何の脅威にも感じていないことが記されていた。
それに火がついたベンヤミンたちは、より大きな犯罪をすることを決意する。ターゲットを連邦情報局に定め、見事にハッキングに成功する。一方で、ベンヤミンはその途中で連邦情報局のデータを盗んでいた。
事件が世間を賑わせ、クラブで祝杯を上げるCLAYだったが、ベンヤミンはマックスがマリとキスしているのを目撃し、ショックを受ける。
マックスを見返すため、ベンヤミンは盗んだデータをMRXに送ってしまう。すると、FR13NDS(フレンズ)のメンバーの一人がそのデータとともに遺体で発見される。
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
それにより、MRXの策略にハマったCLAYは殺人事件の容疑をかけられてしまう。
ベンヤミンはチームに事情を説明し、MRXの正体を突き止めるため、FR13NDS(フレンズ)にコンタクトを取る。すると、「ユーロポールにトロイの木馬(ウイルス)を仕掛けろ」という条件を提示される。
ユーロポールのハッキング難易度は高く、CLAYのメンバーは諦めようとするが、責任を感じたベンヤミンが一人でハッキングし、なんとか内部への侵入に成功する。
そこでMRXの正体を暴こうとするが、MRXはベンヤミンの行動を見抜いており、逆にベンヤミンの正体が暴かれてしまう。さらに、アジトに戻るとマックスらは殺害されていた。
追い込まれたベンヤミンは出頭し、ハンナにMRXとFR13NDS(フレンズ)の情報を提供し、見返りに証人保護プログラムを申し出る。
MRXの正体を暴き、逮捕へ導いたベンヤミンは証人保護の準備を待っていた。
しかし、ハンナはベンヤミンの話の矛盾点に気づき、彼の身辺を調べると、ベンヤミンの母親が多重人格者であることを知る。それにより、ハンナはベンヤミンが多重人格者であり、本当は一人だけの犯行であると考える。精神疾患者に証人保護は与えることができない。
ベンヤミンは多重人格であることを否定するが、ハンナは自分の手柄につながったことで、証人保護プログラムの端末を操作させ、結果的に彼を逃がすことにする。
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
自由の身となったベンヤミンは、船上でマックス、シュテファン、パウル、マリらと合流する。彼らは実在し、生きていた。
ベンヤミンはハンナに多重人格であると思い込ませて、証人保護を受けていた。そしてハンナ自身もそれに気づいていることが示唆される。
どんでん返しありきのストーリー
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
本作は、以下の二重構造になったどんでん返し映画でした。
- 実は主人公が多重人格だった
- 実はそれが主人公の作戦だった
本作は、明確にデヴィッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』を意識した物語で、劇中でもベンヤミンの部屋にポスターが飾ってあったり、『ファイト・クラブ』同様にサブリミナル効果も使っています。
率直な感想を述べると、多重人格というオチでは『ファイト・クラブ』の二番煎じとなってしまうため、さらにそれをひねる形の本作ですが、結末のための映画という印象でした。
というのも、主人公たちの動機づけがあまりにも薄く、行き当たりばったりの行動で観客を置き去りにした展開です。
主人公の初恋相手であるマリの存在理由も不明瞭で、ただの大学生である彼女がCLAYメンバーと一緒にいる理由も不明で、事件に巻き込まれた訳でもなく、ベンヤミンの恋心を受け入れたような描写もありません。
本作は、ベンヤミンの語りという「信頼できない語り手」の構造ですが、二重のどんでん返し構造とすることで、何が本当なのかが分からなくなってしまうのです。
『ファイト・クラブ』のような多重人格オチでは、それまでの行動が裏返しになるというタネ明かしがあるからこそ面白さがありますが、本作ではどこまで本当なのか分からかない。要するに、何でもありなんです。
あっさりすぎるプロット
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
本作は、決してつまらなくはないのですが、冷めてしまうところとして、物事があっさり進みすぎることも挙げられます。これもラストありきのストーリーであるためとは言え、いくらなんでもツッコミどころが多いです。
- CLAYのシュテファンとパウルはお飾り
- ハンナ・警備が無能すぎる
- マリは何がしたいのか意味不明
- MRXは最後に簡単に尻尾出しすぎ
挙げればどんどん出てきそうですが、ある意味、信頼できない語り手としての物語だからこそ成立するのかもしれません。
一方で、ハッキングの描き方は視覚的で分かりやすく、楽しめたところでもあります。
パソコンでカチャカチャやるだけの内容が多いハッキングですが、地下鉄の車両内をサーバー空間と見立てて、擬人化することで、MRXやFRIENDSの存在を、視覚的にわかりやすく表現していた点はとても良かったです。
まとめ
今回は、バラン・ボー・オダー監督の『ピエロがお前を嘲笑う』を紹介しました。
マインドファック・ムービーと言われていますが、ラストのどんでん返しのために身を任せる映画と考えれば楽しめる作品です。ハリウッドリメイクも検討されているようで、どんでん返しが好きな人は十分に楽しめると思います。
もっと緻密で張り巡らされたサスペンスを見たい人は、同じバラン・ボー・オダー監督によるNetflixドラマ『ダーク』を強くオススメします。
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