「人間って、計り知れないですね」
今回ご紹介する映画は、『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』です。
ダニエル・シャイナート監督による作品で、実際に起きた事件をヒントに描かれるダーク•コメディ映画。
本記事では、『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』をネタバレありで感想・考察・あらすじ解説します。
ディック・ロングという男の衝撃の死因について分かったとき、あなたは何を感じるでしょうか。
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映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の作品情報
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
ストーリー | |
感動 | |
面白さ | |
テーマ性 | |
満足度 |
あらすじ
ある夜、バンド仲間のジークとアール、ディックはハメを外してバカ騒ぎをしていた。するとディックが死んでしまったことに気づく。警察は殺人事件とみて捜査を開始する一方、ジークとアールはディックの死因を知りながら、自分たちの痕跡を消そうと躍起になっていた…。
作品情報
タイトル | ディック・ロングはなぜ死んだのか? |
原題 | The Death of Dick Long |
監督 | ダニエル・シャイナート |
脚本 | ビリー・チュー |
出演 | マイケル・アボット・Jr. バージニア・ニューコム アンドレ・ハイランド ダニエル・シャイナート |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 100分 |
予告編
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今すぐみるダニエル・シャイナート監督
名前 | ダニエル・シャイナート(画像左) ダニエル・クワン(画像右) |
生年月日 | 1987年2月10日(シャイナート) 1988年6月7日(クワン) |
出身 | アメリカ・マサチューセッツ州(シャイナート) アメリカ・アラバマ州(クワン) |
監督は映画『スイス・アーミー・マン』で突飛なアイデアを美しい映像で描き、長編映画デビュー作品ながらセンスを見せつけたクリエイターユニット“ダニエルズ”の一人、ダニエル・シャイナート監督。
ダニエルズとしての前作となる2016年の映画『スイス・アーミー・マン』は、無人島で孤独な男が、便利すぎる死体と出会って人生を見つめ直す映画。
「オナラで笑わせて、オナラで泣かせる映画」になっており、ある人は生理的に受け付けなく、ある人にとっては人生に希望を見出す唯一無二の映画となっています。
『スイス・アーミー・マン』でも本作でも共通するのは、不謹慎とも言える表現で描く「死」のテーマ性。
脚本を手掛けたビリーチューは、監督の大学時代の親友でもあります。本作のテーマは、学生時代から温めていて、周りの友人たちに「そういう映画は作るべきじゃない」と言われていた映画とのこと。
キャスト
キャスト | 役名 |
---|---|
マイケル・アボット・Jr. | ジーク |
ヴァージニア・ニューコム | リディア(ジークの妻) |
アンドレ・ハイランド | アール |
サラ・ベイカー | ダドリー |
ダニエル・シャイナート | ディック・ロング |
本作、著名な俳優はほとんどキャスティングされていません。逆に言えばそのおかげでフラットに映画を見ることができるのもポイント。
そして本作で誰もがやりたくない役柄であるディック・ロング役は、ダニエル・シャイナート監督自らが演じています。
印象的だったのは、ジークの妻リディアを演じたヴァージニア・ニューコム。
顔芸とまでは言えませんが、「あの事実」を聞いたときの表情の説得力は抜群でしたね。
監督の前作『スイス・アーミー・マン』は配給のみでしたが、本作は制作・配給ともにA24となっています。
A24は『ミッドサマー』や『エクス・マキナ』といった話題作など、監督のアイデア主体の意欲的な作品を数多く輩出している注目の映画スタジオ。
本作のような挑戦的な題材を映像化できるのも、A24ならではと言えるのではないでしょうか。
打ち明けられない人間の心理
誰にも言えないような秘密の1つや2つ、誰もが持っていると思います。
本作は、死んでしまったディック・ロングという人間の死因をひた隠しにする2人の男を主軸に描かれます。
そこには、決して打ち明けられない人間の心理とその滑稽さが巧みに映し出されていました。
『ファーゴ』×『ハングオーバー』×『ブレイキング・バッド』
本作は、いろんな映画の要素が感じられる内容になっていて、実際にダニエル・シャイナート監督は、制作にあたって特に『ファーゴ』を参考にしたと話しています。
上記のような点からも、『ファーゴ』に近いものがありますよね。
また、きっかけとなるハメを外して取り返しのつかないことになっていく点で言えば『ハングオーバー』シリーズに通じるところも感じます。
さらに、打ち明けられない秘密をひた隠しにしようとする度に家族を巻き込んでいき、どんどん状況が悪化していく様子は海外ドラマ『ブレイキング・バッド』のようでもあります。
劇中の会話の中ではクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』への言及が合ったのも印象的。
こういう映画の面白いところは、観客としては滑稽で笑える部分がある一方で、当の本人たちは大真面目であるということ。
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ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】ディック・ロングの衝撃の死因とは
ある夜、友人のディック、ジーク、アールの3人は一緒に遊んでいたが、ディックが原因不明の大怪我を負ってしまう。ジークとアールは、彼を救急病院の前に置いて逃げ去っていく。
帰宅したアールは、恋人のレイクに緊急事態だと告げて町を離れることを告げる。
ジークは妻のリディアに娘を学校に送るように頼まれる。ディックの財布を持ってきていたことに気づき、免許証をテーブルに置く。娘のシンシアに聞かれて「財布を拾った」と言うと、「警察に届けないと」と言われる。
その後、車の後部座席が血まみれになっていることに気づき、シーツをかけるが、シンシアが後部座席に座ってしまったため、彼女の服に血が染み込んでしまう。立ち寄ったガソリンスタンドで娘が警察官のダドリーに落とした財布の話を伝え、ジークは仕方なく財布を手渡すのだった。
ERの医師は、保安官のスペンサーに協力を要請する。ディックが腹膜炎による直腸の出血が死因で、体内から精液が検出されたことから、レイプによる犯行ではないかと疑っていた。その後、スペンサーはダドリーに殺人事件として協力を依頼する。
ジークはアールにシンシアを学校に送り届けるように頼み、車の洗浄と娘の血で汚れた服を処理していた。一方アールは学校でディックの妻ジェーンに夫の行方を聞かれるも、はぐらかす。車の汚れが落ちないと諦めた2人は、池に車を沈める。
その後、ジークはリディアに車を盗まれたと伝えるが、レイプ犯と関係があると考えたリディアは警察に通報。しかしシンシアの話と矛盾することで問い詰めたリディアにジークは事実を伝える。ジークとアールは、何年にも渡り、馬のコメットと性行為を行っていたのだった。
スペンサーとダドリーが車の盗難の事情聴取のため、ジークの家へやってくる。不自然な態度のジークを怪しみながらも、聴取を終えて帰るが、ダドリーはディックの財布を届けたのが友人のジークであることに気づき、その違和感から再度ジークの家へやってくる。
そこへディックの妻ジェーンもやってききて、嘘を突き通せない状況になったジークは逃げ出し、馬小屋のコメットを逃げ出そうとするが、ダドリーに逮捕されるのだった。
翌朝、ダドリーはスペンサーからディックの死因が殺人ではないため釈放することになったと告げられる。信じられない様子のダドリーだったが、リディアやシンシア、ジェーンの人生を考慮した結果だと伝えられる。
ジークはシンシアの授業参観に顔を出し、リディアに別れを告げる。その後、アールとともに町を出ることに決めるのだった。
【ネタバレ感想・考察】笑えるようで全然笑えない
タイトル「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」に答えると、飼育している馬のコメットとセックスしたことが原因で死んだのでした。
“ディック・ロング(長い男性器)”という、どぶろっくで言うところの“大きなイチモツ”の意味なので、何となく想像ができる展開の本作。
人がやましいことを隠すときの心理描写が巧み
「なぜ死んだのか?」というタイトルですが、その死因を追求するところに重きを置いた物語ではなく、本作は事実をひた隠しにしようとするジークとアールの2人のドタバタ劇が中心に描かれます。
この心理描写が何とも絶妙なんですよね…!
やましいことを隠すとき、ウソをウソで重ねて次から次へと自分で墓穴を掘ってしまう様子が、見ていて辛い部分もありながら、多かれ少なかれ経験したことがある人も多いと思います。
あまりにもジークとアールの2人が行きあたりばったりなので、自分で自分の首を締めていく様子は何とも滑稽。
そんなアールが最後に弾き語りして、エンディング曲にもなっているのはNickelback(ニッケルバック)の名曲「How You Remind Me」でした。
自分の過ちを後悔、反省する様子を歌った歌詞になっていて、2人の様子を物語っていますね。
そんなアホな男性2人の一方で、女性たちの姿が特に印象的でもありました。
印象的な女性たちの描き方
本作は、監督の出身地であるアメリカ南東のアラバマ州が舞台。田舎町特有の狭いコミュニティが上手いスパイスとなっています。
事件の捜査を担当する警察官の描き方も特徴的で、『ファーゴ』に通じるものがありました。
杖をついた熟年の女性警察官と、意欲的な女性警察官の2人が事件を捜査するのですが、真実に近づくまでが非常にゆったりと描かれます。
このジワジワと追い詰めて行く様子が、嘘を積み重ねる男性陣と対照的で面白いところ。
まるで浮気の事実を問い詰めていくカップルの修羅場を見ている感覚でした!
死んだディックを含め、ジークとアールのどうしようもない男性たちの一方で、そのほかの登場人物がほとんど女性というのも印象的。
ディックの死因とそれを打ち明けたときのジークの妻リディアの心情がすごくリアリティがあるんですよね。
ダドリー、リディア、ジェーンの女性3人を前にして、ジークの真実が明らかになる場面の空気感は何とも言えません。
ディック・ロングの死因は想像の斜め上ではありますが、そこが物語の主題でなく、真実に至るまでの過程と、その後の対応こそがこの映画のポイントでした。
そしてこれがフィクションではなく、実話であるということも驚きです。
実話を元にした物語
信じられないかもしれませんが、本作は実話を元に描かれた作品です。
「イーナムクロー馬姦事件」という2005年にワシントン州で実際に起きた事件を元にしていて、この事件を題材としたドキュメンタリー映画『Zoo』がサンダンス映画祭にて発表されています。
映画では、ジークとアール、そして死んだディックの真相を公表することは、彼らの妻や娘にとって、その後の人生を大きく変えることになるため、公表されないという展開が印象的でした。
実際の事件ではシアトル・タイムズによって報道され、2005年に最も読まれた記事の1つになったとのこと。
事件後、事件が起きたワシントン州では動物との行為やその撮影を禁じる法案が可決され、現在では重罪として5年以下の懲役が科される犯罪行為となっているとのこと。
まとめ:人間は計り知れない・・・
今回は、『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』をご紹介しました。
ジャンルはブラック・コメディとされていますが、正直まったく笑えない映画です。
とはいえ、監督の前作『スイス・アーミー・マン』もそうでしたが、挑戦的な題材を映画としてちゃんと成立させているところが監督のすごいところ。
ダニエルズとしての今後の活動にも注目していきたいです。
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